ウクライナのゼレンスキー大統領が強調する「戦争をロシアに押し戻す」との言葉通りに、ロシア国内でも戦火に巻き込まれる民間人の被害が出始めている。ウクライナ軍によるロシア各地でのドローン攻撃が続く中、海水浴客や街中の市民の間でも被害を発生しており、痛ましいニュースが報道されている。
ただ、ウクライナでは2022年のロシア軍の全面侵攻開始当初から、比較にならない規模の被害を受けてきており、国際世論でもロシア側に同情する声はほとんど聞かれないのが実情だ。「自国民に被害を出したくないなら、そもそも侵攻などすべきではなかった」との考えが多くの人々の思いであることは疑いようがない。
ロシア当局はむしろ、社会不安の拡大につながる被害の詳細の公表を控えたり、「ドローンは北大西洋条約機構(NATO)で生産されたものだ」などと責任を西側になすりつける発表を繰り返している。5年目に入った戦争がまったく終わる気配が見えない中、政権に対する責任追及につながらないよう必死になっている当局の姿が浮かび上がってくる。
「日光浴用の椅子で身を隠した」
「専門医や医薬品は、足りています。問題はありません」「負傷者の名前も、どこから来たのかも、迅速に情報を救急隊員らが集めてくれています」
8月3日、ウクライナ軍のドローンがビーチに落下し7人が死亡したロシア南部の黒海沿岸のリゾート地、ゲレンジーク市の市長は負傷者が収容された病院を視察し、病院関係者や看護婦らの報告を受けていた。地元テレビは数分にわたり、市長が病院を視察した状況を報道していたが、立て板に水を流すように報告する病院関係者の発言には、撮影前にしっかりと準備がなされていた様子がうかがえた。市長は「十分に連携をとり、最大限の支援をしてくれ」と強調した。
市長による病院訪問のメッセージは明白だった。「当局は事態をしっかりと掌握している。市民は心配すべきではない」ということだ。
SNSで広がった、人々が集まるビーチにドローンが落ちて爆発する映像はショッキングなものだった。落下した地点の付近には明らかに海水浴客がおり、地元メディアは、子供を連れた母親らが巻き込まれたなどと詳細を報じた。
人々は「ショックで身動きができなかった」「もう間に合わないと思い、岩陰に隠れて日光浴用の椅子で身を覆った」「知人と待ち合わせをしていたが、向かおうとしたら“ドローンが落ちた”と連絡があった。海岸から逃げてきた人の中には、肩から血を流した男性もいた」などと緊迫した現場の様子を証言していた。
