ウクライナ軍のシルスキー総司令官は7月10日、2026年前半を総括した。ロシア軍の地上戦における大規模攻勢が失敗に終わり、1カ月平均の兵員損耗数(死傷者数)は3万2000人以上に上り、地上戦における作戦の主導権は、今やウクライナ軍が握っていると言明した。
他方で、引き続き激しい航空戦が継続していることはゼレンスキー大統領も認める。特に5月中旬以降、ロシアは首都キーウをはじめ、ウクライナ各地の住宅やエネルギー施設等、民生インフラに対する大規模空襲を強行して民間人に多くの死傷者を出している。
ウクライナもロシア領内の石油関連インフラへの長距離攻撃およびロシア占領地後方に位置する補給路に対する中距離攻撃を激化させており、ロシア国内ではガソリン不足、クリミア半島等の占領地では物資不足が深刻化している。これを受けてロシア国民の3分の2以上が停戦交渉を望んでいると報じられている。
開戦以来4年5カ月、戦闘激化の陰で、ウクライナとロシアはそれぞれ、停戦に向けて外交を活発化させている。
G7エビアン・サミット
2月末に始まった米国およびイスラエルによるイラン軍事作戦の結果、米国はウクライナ戦争に関するロシア寄りの仲介外交から一時的に離脱している。紆余曲折を経て米・イラン間で停戦交渉が動き出したのに合わせて、ウクライナとロシアは、停戦の鍵を握る米国に働きかけを再開している。
まず、ウクライナ側が動いた。6月4日、ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領に対して、停戦に関する直接交渉を呼びかけた。
プーチン大統領は拒否したが、そのこと自体はウクライナ側にとって織り込み済みで、真の狙いは、6月中旬にフランス東部エビアンで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)で欧州諸国の支持を取り付けて、米国をウクライナ寄りの外交に取り込むことであった。フランスのマクロン大統領と周到に打ち合わせたことも功を奏して、トランプ大統領を含むG7首脳は、「地政学的課題に関するG7首脳声明」の中で、ウクライナに対する軍事・経済・エネルギー支援の増強、および、石油・ガス部門を含む対露経済制裁の強化という方針を再確認した。これを受けて、米国はイラン戦争の影響で一時的に容認していたロシア産原油の輸出措置を打ち切って制裁を元に戻した。
