筆者の旧知の仏政府関係者は、「以前はロシアが戦闘に勝っていると思い込んでいたトランプ大統領が、今やウクライナが戦場で優勢であることを正しく理解するに至った」としみじみと述べていた。
米国の心変わりにロシア側も手を拱いてはいなかった。ロシア政府指導者は、昨年8月の米国アラスカのアンカレッジで開催された米露首脳会談において達成されたとロシア側が主張する「アンカレッジ合意」、あるいは、「アンカレッジ精神」を米国が履行していないと批判し、米国がロシア寄りの仲介外交を再開するよう求めた。しかしながら、米国側の反応は冷淡で、「アンカレッジ合意」など存在しないとけんもほろろであった。
ウクライナ側が持つ〝自信〟
ポーランドのグダンスクで6月25~26日、毎年恒例の「ウクライナ復興会議(URC)」が開催された。22年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻以後、スイスのルガノ(22年)、ロンドン(23年)、ベルリン(24年)、ローマ(25年)の順にウクライナの復興と改革をテーマに毎年開催され、今年初めて「防衛と安全保障」を主要テーマの一つに取り上げた。その目的は、戦時下で独自に著しく発展したウクライナ防衛産業を戦後の欧州の安全保障に役立てること、その為にウクライナと欧米の軍需・汎用品産業間の協力を進展させることであった。
昨年のローマ会議と比較して、会議場には明るい雰囲気が横溢していた。戦況がウクライナ側に有利に推移している現状を反映しているとみられる。「ロシアは戦争に勝っておらず、ウクライナの長距離攻撃から逃れられないのだから真剣に停戦交渉に応じるべきである」と多くの参加者が発言していた。
欧米は、慎重ながらも、ウクライナ戦争の停戦、その後の安全保障に徐々に目を向けつつある。
6月29日~7月2日に韓国及び我が国を相次いで訪問したウクライナのシビハ外相が携えてきた主要メッセージも防衛協力であったことは偶然ではない。筆者との個別面談において、ロシア・北朝鮮・中国の協力の結果、悪化している東アジアの安全保障環境を踏まえて、「ウクライナと日韓は、防衛産業協力や防衛協力を強化すべきである」シビハ外相は語った。
ウクライナが一方的に支援を受ける立場から、戦時下で培った防衛力および実戦経験を同志国に提供し得る対等のパートナーになった自信がみなぎっていた。
NATOアンカラ・サミット
ウクライナとロシアの外交は、7月7~8日にトルコのアンカラで行われた北大西洋条約機構首脳会議(NATOサミット)を念頭において、さらに活発になった。今度は、ロシア側が先に動いた。
トランプ大統領が重視する7月4日の建国250周年に際して、プーチン大統領は祝電を発出し、第二次世界大戦における両国の同盟関係や二大核保有国としての両国の共通の責任に思いを寄せ、米露間の対等な関係改善を訴えた。また、4日に実施されたトランプ・プーチン電話会談において、プーチン大統領は、停戦に向けた米国の関与を改めて求めて、トランプ大統領も早期の停戦に向けて協力する姿勢を見せた。
