かつて成田空港からのフライトが到着していたモスクワ・シェレメチェボ空港から都心までの道は、つねに渋滞していた。都心まで30キロメートルほどだが、2時間、3時間かかることがよくあった。
ロシア国内の製油所へのウクライナのドローン攻撃により、ガソリンの供給量が減り、給油に長蛇の列ができている状況なので、今は、渋滞も多少緩和しているかもしれない。
ロシアは世界第2位の産油、産ガス国だ。製油所へのウクライナのドローン攻撃が激しくなる前は、原油も国内で精油されたガソリンなどの石油製品も輸出していた。
今は多くの製油所が攻撃された結果、4月にガソリン、6月にジェット燃料の輸出は禁止された。軽油も今月輸出禁止になっている。
国内のガソリン不足は、ほとんどの地域に及んでいる。国内の自動車台数の14%、航空機発着の40%を占めるモスクワに地方からガソリンとジェット燃料を送るためもある。
ウクライナからの情報によるとロシア国内の9割の地域で何らかの配給制度が導入されている。チェチェン共和国など6地域では営業しているガソリンスタンドはなくなった。
携行容器への給油禁止、配給制も導入されているシベリアのイルクーツクでは、給油のために最長18時間かかったとのニュースもあった。市長の指示で仮設トイレが設置されている。
7月6日に西シベリアのロシア最大のオムスク製油所へのドローン攻撃が報じられた。攻撃前の段階でもオムスク州では1台当たりの給油量が10.5ガロンに制限されていたが、攻撃後政府系車両などを除き給油が停止された。
7月7日から8日にウクライナは3番目の規模のタネコ製油所を再度攻撃した。ウクライナの発表では、ロシアの10大製油所の内5カ所が4月末までに攻撃されていたが、7月9日までに10大製油所全てが攻撃された(図-1)。ガソリンスタンドの行列はさらに長くなっているだろう。
共産主義時代の行列に慣れていたロシア人の中には、行列に平気で割り込む人も結構いる。空港の通関のための行列に割り込みがあるのは日常茶飯事だ。
注意しても、返事はいつも同じ。前に並んでいる人を指さして「My friend」だ。ある時割り込んだ人が英語に堪能だったので、「友達ではないだろう」と詰問したことがある。返事は「世の中皆兄弟、友達だろう」だった。
だが、給油所では皆友達とはいかないようだ。車列に割り込み殴り合いになったニュースも出ている。こっそり携行缶に給油する人も後を絶たないようだ。隣国カザフスタンは、国境を越えガソリンの購入に来る車を防ぐため、国境を越えての通行を1日1回に制限した。
ウクライナのゼレンスキー大統領がガソリンスタンド国家と呼んだロシアがガソリン切れになっても、スタンドの経営者、プーチン大統領は安泰とみる向きが多い。なぜだろうか。
