古今東西、戦争が膠着・長期化すると、「戦略爆撃」が前面に出てくるというパターンがある。戦略爆撃とは、戦場で敵部隊を攻撃するのではなく、敵国の戦争遂行能力や国民の士気にダメージを与えることを目的とした非戦闘地域への攻撃である。具体的には、相手国の産業、エネルギー、交通、都市などを叩き、敵の継戦能力や抵抗の意志を折ろうとする。
ロシア・ウクライナ戦争も、完全にそのフェーズに入っている。お互いに強固な防衛線を築き、また空中には大量にドローンが飛び交う中で、どちらも決定的な突破口は開けない。
そこで、ロシア側はウクライナの電力インフラ、港湾、工場、都市部、文化遺産などへの空爆を続ける。対するウクライナも、ロシアの製油所、石油貯蔵施設、弾薬庫、軍需工場、空軍基地などへの長距離ドローン攻撃を強化している。もちろん、前線では今なお、熾烈な戦闘が続いているのだが、戦線は容易には動かず、今日ではもはや戦争の焦点はドローンによる戦略爆撃の応酬に移っている感がある。
その際に、ロシアがドローン攻撃で最大の標的としているのは、ウクライナ国民の「心」であろう。疲労、恐怖、厭戦ムードを植え付けて、抵抗を諦めさせようとする狙いが見て取れる。ゆえにロシアの攻撃は、冬場に電力や暖房を奪おうとするものや、あからさまに住宅を狙ったものが多い。
対するウクライナは、ロシアの「経済」を叩くことに注力している。その最大の標的が、製油所やその他の石油関連施設だ。最近では、ウクライナのドローン攻撃を受けたロシアの石油関連施設が爆発・炎上する様子が、毎日のように報道されている。
このように、ロシアはウクライナの心を、ウクライナはロシアの経済を殴るというのが、基本構図であろう。ただ、両国による攻撃の応酬の様子を見ていると、それだけではない、より根深い本質が透けて見えるのである。
