Foreign Policy誌(web版)に6月4日付で掲載された論説‘Vladimir Putin’s Second-Biggest Headache’が、「チェチェン共和国のカディロフ大統領は重篤な病を患って末期症状にあるとされるが、後継者問題が片付いていない。プーチンはウクライナ戦争に加え、チェチェンの不安定化という第二の難問を抱えることになる」と指摘している。
ここでは、この論説の内容を踏まえ、プーチンにとってチェチェン問題がなぜ再び大きな頭痛の種となる可能性があるのか解説したい。
カディロフの健康不安説は、膵臓壊死などと報じられた2019年頃からあったが、その後、20年にはコロナ感染、22年には腎不全による入院説などが広がり、最近ではプーチンの年次教書演説に23年、24年と2年連続で欠席、25年12月の国家評議会の会合にはロシア全土で唯一チェチェン共和国からのみ代表が出席せず、さらに、杖をついて歩く姿がメディアで確認されるなど、目に見える形で病状の悪化が窺われた。
そのような中でカディロフは、本年1月には長男のアフマト(20歳)を副首相代行に、また三男のアダム(18歳)を過去2年のうちに警護責任者を含む複数の要職に任命するなど、親族による後継体制の構築を急いでいる。しかしながら、ロシアの法律では地方首長の有資格年齢は30歳以上でなければならず、息子たちを公式に共和国トップに就けるにはあと10年以上必要になる。
血縁による支配の持続性の問題の他に、ポスト・カディロフの不安定化を予見させる要素が少なくとも3つある。
第一は、これまでカディロフに排除されてきた共和国内外のチェチェン人各勢力による反乱だ。カディロフは絶対的支配を確立する過程で、抵抗勢力に対する弾圧、暗殺などを繰り返してきた。彼らの多くは、カディロフ亡き後の権力の空白を狙っている。
政権側にとって特に懸念されるのは、ロシアからの独立を目指し戦っていたがカディロフ派から排除され、今はウクライナでロシアと戦っている兵士たちだ。彼らはウクライナ人以上に長い戦闘経験をもち、ウクライナの激戦地で現代戦の実戦経験を積んだ、正に精鋭部隊である。
