2024年7月19日(金)

Wedge REPORT

2024年6月20日

 京都というと、遷都後の平安時代以降の仏教・寺院というイメージが強いかもしれない。だが、遷都前からの歴史の古い神社もじつは多く、これらは平安時代以降のイメージに隠されてきた。意外にも、京都市周縁部には、平安京成立以前から祀られていた古社が多い。
 この記事は、『京都古社に隠された歴史の謎』(古川順弘著、ウェッジ刊)の刊行にあたって著者に書き下ろしていただいたものです。
(Alvin Huang/gettyimages)

喧騒の京都を離れて辿る静謐の古社たち

 日本の観光地として長らくナンバーワンの人気を誇ってきた京都だが、近年は観光客の過剰さが話題にのぼることが多い。とくに目を引くのは外国人観光客の多さだ。そして観光客の大幅な増加は、騒音・ゴミ・渋滞・マナー違反などのトラブルを引き起こし、いわゆるオーバーツーリズム(観光公害)という問題を生じさせている。

 インバウンドも含め、京都を訪れる観光客はコロナ禍で一時は激減したものの、コロナへの警戒が薄れるにつれて着実に需要は回復。今年のゴールデン・ウィークでは、京都の観光名所はどこも大混雑となった。これには、円安の影響で外国人が日本を訪れやすくなったことも大きく関係していたようだ。「京都の観光客の8割は外国人」という話も聞く。

 名勝・嵐山なども連休中は大にぎわいだった。ここはもともと京都でも一、二を争う人気観光スポットだが、しかしその人込みに出くわして、さすがに辟易した人も少なくはなかっただろう。

 ところが、渡月橋を西に渡り、川岸に沿って下流方向に10分も歩くとどうだろう。さっきまでの喧騒は嘘のように消え去り、通りを往来する人の姿もまばらとなる。さらにもう10分ほど歩けば、右手に大きな赤鳥居が見えるはずだ。神社の多い京都でも指折りの古さを誇る、松尾大社である。

嵐山・渡月橋近くにある松尾山(著者撮影)

 松尾大社は平安京が造営されるはるか以前からこの地に鎮座していたと言われる古社で、神体山である松尾山の麓に広がる境内には、重要文化財に指定されている1542年建造の本殿をはじめ、見どころとなる社殿やスポットが多い。

 もし嵐山の人込みに疲れたとしたら、少し足を延ばして松尾大社を参詣してみてはどうだろうか。閑静な雰囲気の中で、落ち着いて古都の歴史を味わうことができるはずだ。


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