2025年3月16日(日)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2025年3月15日

3月は「大腸がん啓発月間」。ブルーリボンが掲げられる(Carol Yepes/gettyimages)

 癌のステージ4という厳しい診断は、多くの人に絶望感をもたらす。しかし、数少ない生還者たちはその逆境を乗り越え、希望の象徴となっている。彼らの物語は、単なるサバイバーの話ではなく、多くの人生の教訓を含んでいる。今回は、Sさん、Tさん、Yさんの3人のケースを通じて、彼らがどのように癌と向き合い、克服したのかを紹介する。

人のために役立つことが自らにも良い影響をもたらすという姿勢

 Sさんは53歳の時、初めての診断でステージ4の大腸がんと告げられた。腫瘍は肝臓に転移しており、医師からは即座に治療を始めるように勧められた。ショックと恐怖を感じた彼は、冷静に行動を起こすことを決意した。信頼できる医療機関でFOLFOX(フォルフォックス)療法を受け始めたが、治療初期は吐き気や倦怠感に悩まされた。食事を摂ることも困難であったが、抗吐剤を使い、消化の良い食品やスムージーを取り入れることで栄養を補った。

 治療の途中でCTスキャンを行い、腫瘍が縮小していると確認されたとき、Sさんは希望を感じた。この結果はポジティブな思考をさらに強化し、彼に心の光をもたらした。その後、免疫療法としてPD-1阻害剤を導入し、腫瘍はさらに縮小した。趣味である音楽や絵を通じて心の安定を図り、ストレスを軽減する努力を続けた。

 さらに、サポートグループに参加し、同じ病気を持つ人々と情報を共有することで精神的な支えを得ることができた。特にSさんは中小企業の経営者であり、会社の未来に強い夢を抱いていたため、「自分は死ぬわけにはいかない」と周囲に語りかけていた。

 女性のTさんは47歳でステージ4の大腸がんと診断された。子どもを育てながら生活していた彼女にとって、この現実は非常に厳しいものであった。しかし、彼女は直ちに治療を始める決意を固め、手術を受けた後、FOLFIRI(フォルフィリ)療法を選択した。治療が始まると、脱毛や口内炎といった副作用に苦しむことになった。特に口内炎が食事を困難にし、流動食やスムージーを取り入れ栄養を補う必要があった。

 彼女の家族は治療に理解を示し、全力で支えた。特に子どもたちは、母親の負担を軽減するために協力して家事を手伝った。このような家族の支えが、彼女の精神的な安定をもたらし、困難な時期を乗り越える力となった。Tさんは、ストレス管理のためにマインドフルネスやアートセラピーを取り入れ、趣味の時間を大切にした。

 治療の途中で行ったCTスキャンでは腫瘍が縮小していることが確認され、彼女は大きな希望を得た。特にTさんは、子どもの成長と将来のために自分が何としても生きなければならないと強い母の愛が彼女を支えた。

 Yさんは60歳で、初めての診断でステージ4の大腸がんと告げられた。腫瘍は約6センチで、リンパ節にも転移が見られた。彼は仕事を続けながら治療を始める決意を固め、FOLFIRI療法を選んだ。治療が始まると、吐き気や倦怠感に悩まされ、特に治療後の48時間が辛かった。食事を摂ることが困難な中、抗吐剤を使用し、流動食や栄養補助食品を取り入れることで体力を維持する努力を続けた。

 Yさんの家族は、彼の治療に関する情報を一緒に調べ、医師とのコミュニケーションをサポートした。家族全員でガーデニングを楽しむことで心の安定を図り、ストレスを軽減することができた。治療の経過を追う中でCTスキャンの結果、腫瘍が縮小していることが確認され、これが彼にさらなる希望を与えた。現在、Yさんは経過観察中で、延命期間は2年以上に達している。彼は自分の人生に強い目的意識を持っていたことが良かったと語る。

 この3人の物語には共通する教訓がある。それは、がんと闘う中でポジティブな思考を持ち続け、家族や周囲のサポートを大切にし、自分自身の健康を維持する努力が必要だということである。彼らの姿勢からは逆境を乗り越えるための胆力や周囲とのつながりの重要性を学ぶことができる。

 また、彼らが社会貢献や啓蒙活動に熱心であることも共通の特徴である。Sさんはサポートグループに参加し、同じ病気を持つ人々を励まし、情報を共有する活動に積極的に取り組んでいる。Tさんも、自身の経験をもとにがんに関する情報を広めるための活動に参加し、他の患者やその家族を支えることで希望を与えようとしている。Sさんも地域の活動に参加し、がんに関する意識を高めるための啓蒙活動に取り組んでいる。

 彼らの行動は「情けは人の為ならず」という信念を体現している。人のために役立つことが自らにも良い影響をもたらすという姿勢が、彼らをステージ4から生還させた要因であろう。自らの経験を通じて得た知識や感情を他の人々と分かち合うことで、彼らは自らの心をも豊かにしている。また、社会に対する意識も高まり、がんに対する理解を深めるための活動に参加することで自らの存在意義を感じている。


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