2025年2月18日(火)、第11回バッテリーサミットBattery Summit in TOKYOが開催された。現在、「バッテリー戦争」が激化している理由は、バッテリーが単なる部品ではなく、経済、安全保障、地政学の中心にある戦略物資であるからである。
まず、バッテリーにとってレアメタルの位置付けは極めて重要である。バッテリーにおけるレアメタルの役割は、エネルギーの蓄積と供給において不可欠なものであり、特にリチウム、コバルト、ニッケルの3つは、リチウムイオンバッテリーの性能を左右する主要な成分である。これらのレアメタルは、バッテリーの性能と持続可能性を向上させるために欠かせない要素であり、バッテリー戦争においても重要な役割を果たしている。
「もっとも〝レア〟なレアメタル」

特に、バッテリーにおいて「もっとも〝レア〟なレアメタル」とされるのは、コバルトである。コバルトはリチウムイオンバッテリーの性能を向上させるために不可欠な材料であり、特に熱安定性を高める役割を果たす。
しかし、その供給は主にコンゴ民主共和国に依存しており、政治的リスクや倫理的な問題が伴う。コバルトの採掘は、しばしば労働環境や環境保護の観点から批判され、その供給の安定性がバッテリー産業における大きな課題となっている。したがって、コバルトの安定供給を確保することは、バッテリー業界の未来を左右する重要な要因とされている。
このような状況において、バッテリー戦争が激化している理由は明らかである。電気自動車(EV)は自動車産業の主流になると考えられており、その心臓部であるバッテリーの供給を支配することは、自動車産業全体の主導権を握ることにつながる。
中国はすでに世界最大のEV市場と生産拠点を持っており、CATLやBYDといった企業がリチウムイオン電池市場を席巻している。一方、米国や欧州もEV産業を発展させるために対抗し、貿易戦争が激化している。
それに加えて、リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイトなどのレアメタルも不可欠となる。これらの資源は限られており、中国はアフリカや南米の鉱山を支配し、サプライチェーンを確立している。
米国や欧州は資源の確保と精製能力の強化を進めており、バッテリー戦争は製品競争だけでなく資源の争奪戦でもある。
軍事、再エネにも不可欠
バッテリー未来の石油
また、バッテリーはEVだけでなく、再生可能エネルギーの蓄電池や軍事技術(ドローン、潜水艦、電磁兵器)にも使用される。米国は「インフレ抑制法(IRA)」を通じて、中国製バッテリーに高関税をかけ、国内生産を支援している。
一方、中国は独自の供給網を強化し、米国の制裁を回避しながら影響力を維持しようとしている。
サプライチェーンの分断と関税問題も無視できない。米国は「中国製バッテリーを排除」する政策を進めているが、現状では中国が世界のバッテリー市場を支配しているため、完全なデカップリングは難しい。
関税や補助金の競争が激化する中、日系企業(パナソニック、トヨタ)や韓国企業(LG、Samsung)も影響を受けているとみられる。バッテリーの供給網は複雑であり、各国が独自に確立しようとすればコストが上昇する。
バッテリーは脱炭素社会の実現に不可欠である。再生可能エネルギーの安定供給には大規模な蓄電池が必要であり、この分野で中国が主導権を握ると、エネルギー政策に影響を及ぼす。
このように、バッテリーは「未来の石油」とも言えるものである。かつて石油が中東を巡る戦争や政治的駆け引きを生んだように、バッテリー技術や資源を制することは国家の繁栄と安全保障に直結する。米中はバッテリーを巡って激しく対立し、世界各国も巻き込まれる「バッテリー戦争」となっている。このテーマは、米中の対立構造を超え、より広い視点で関係国や経済政策の影響を考えるものである。