2024年12月22日(日)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2022年9月10日

 シンガポールから日本に帰国できずに2週間もホテルで待機させられたことは前回のコラムに書いた通りだ。『日本人コロナ難民が足止めされているシンガポール』

 足止めさせられた理由は日本大使館の領事部からの帰国許可が下りなかったからである。PCR検査では遺伝子配列の関係から完全な陰性になることはなく、いわゆる「疑似陽性」の形で結果が出てくるので、抗原検査と合わせて実際には回復してる途中だと判断するのが国際常識である。しかし、日本の場合だけはその常識が通用しないのだ。つまり行政が一度決めた方針が明らかに間違っていても、指摘する人材がいないのである。

 ところが、政府は突如8月24日の通達で72時間以内の陰性証明の提出を免除することを決定した。今までのルールは何だったのかと言いたい。あれだけ領事部に抗議しても政府の方針だからとの理由で受け付けなかったルールが説明なしにあっさり変更されたのだ。ただし9月7日からの実行である。なぜか2週間以降となった。

 この猶予期間に何の意味があるのか分からない。説明のないこの実行の遅れは何だろう? 一時が万事で誰も責任を取りたくないので岸田文雄首相が緩和方針を伝えるまでは誰も言及しないのである。水際作戦に従事している専門家ですら自己の意見は出さずに保身に努めているように見える。

 何を決定するのも風見鶏体質だから保身が優先されるのがもどかしい。非合理的な判断からくる経済的損失や多大なる無駄を決められたこととして疑問視する人はいないのである。普通に考えれば当たり前のことが日本という国では判断しない方が賢いとされているようにさえ見える。

 メディアが大袈裟にコロナ禍の危険性を騒ぎ、日本中がワクチンの重要性に耳を傾ける毎日が2年半も続いた。有識者と呼ばれる人がTVに出ない日はなく、大騒ぎをしていることも気になった。

 政府は根拠の乏しい自粛生活を強要した。日本人は実に従順にお上の要請に従った。マスクを忘れると非国民扱いされ、外出すらできない沈鬱な2年半を過ごした。なぜか、われわれ日本国民は世間体を気にして意味のない同調圧力に屈してしまうのだ。

(drante/gettyimages)

既得権益に挑戦しない日本人

 政治も行政も、そして国民も、誰も責任を取りたくない。つまり、誰もが「セルフデシジョン(自己決定)」することをやめ、自己保身、思考停止に陥っているのが日本の現状なのかもしれない。

 そのような視点から日本の国際ランキングを調べてみた。海外との比較をすれば日本の実態がはっきりするからだ。例えば、以下が最下位だという。

  • 企業活動指数 
  • 教育への公的支出
  • 大学教育レベル 
  • 労働生産性
  • 平均睡眠時間最下位
  • 社員のやる気
  • 仕事へのやりがい
  • 仕事への満足度

 どのような調査をしたのかは定かではないが、私は概ね当たっているのではないかと思う。よく話題にのぼる世界の幸福指数ランキングでも日本は決して高くはない。各国の幸福度は主に「主観的な幸福度」によって決定される。2022年度の日本のランキングは世界156カ国中58位だという。

 一方で、3年ぶり訪れたシンガポールのランキングを見て驚いた。

 2015年の幸福度は148位だったのに、一昨年21年は32位で、22年には27位まで改善していた。一方の日本は2015年に46位だったのに、昨年の21年は54位で完全にシンガポールに逆転されていたのだ。さらに22年は56位まで下落の一途である。

 その内訳で日本の劣化が目立つのが、「社会の自由度と寛容度」と「国家への信頼度」の低下傾向である。

 逆にシンガポールは、どの要素も日本を追い抜いている。日本との地位が逆転したのだ。それは、既得権の維持ではなく、激しい競争環境の中で、「自分にもチャンスがある」と、シンガポール国民が思えるようになったからではないか。


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