2025年4月16日(水)

21世紀の安全保障論

2025年4月12日

 政府は、台湾有事に伴う日本への武力攻撃を念頭に置き、沖縄県の先島諸島(宮古島市、石垣市、竹富町、与那国町、多良間村の5市町村)の住民の九州・山口8県への避難を計画している。住民を受け入れる側の九州・山口8県が策定した計画では、観光客を除く島民約11万人を8県の計32市町のホテルや旅館などで受け入れる内容となっている。

台湾有事が起きた際に、石垣島をはじめとした先島諸島から住民を避難させることはできるのか( motive56/gettyimages)

 言うまでもなく、国際人道法では民間人への攻撃は禁止されている。しかし、実際には多くの戦争で民間人が意図的に攻撃されており、現在でもウクライナではロシア軍の攻撃によって民間人の犠牲者が増え続けている。これは、民間人を攻撃することで相手国民に恐怖を与え、戦意を挫く効果を狙っているからだ。

 こうした戦争の現実を踏まえれば、台湾有事の際に攻撃される可能性のある先島諸島からの住民避難計画は、現実的な国民保護に向けた大きな一歩と言える。とはいえ、現在の計画には違和感も漂う。

 自然災害大国の日本では、住民避難は珍しくない。被災した住民の多くは避難所に身を寄せるが、避難所は基本的には安全とされる場所にあり、そこで再び被災するリスクは低い。また、自然災害の被災地は特定の地域であり、日本全国が被災地となる訳では無い。

 このため、住民が避難を迫られるのは基本的に被災地「だけ」となる。違和感の正体は、この自然災害での住民避難の構図が、台湾有事に伴う住民避難にも適用されていることだ。


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