2025年4月13日(日)

21世紀の安全保障論

2025年3月7日

 衆議院予算委員会で、自衛官(制服組)に答弁を許すか否かを巡って、ため息が出る場面があった。いまだに“軍人イコール悪”という狭量さを露呈したと言ってもいい。

 それは2月5日の同委員会で、国民民主党の議員が、答弁者である政府参考人として陸上自衛隊の教育訓練研究本部長らの出席を求めたのに対し、立憲民主党の安住淳予算委員長が、制服組が答弁をしない判断について、「シビリアンコントロール(文民統制)の重みをわきまえて国会はやってきた。(中略)戦後の長いルールの中で重く積み上げてきたもの」などとして、これからも出席を容認しない考えを強調した場面だ。

制服組に国会答弁は控えさせるべきなのか(つのだよしお/アフロ)

 なぜこれが狭量かと言えば、急速に悪化する安全保障環境の中で、政府そして国会は、文民統制を堅持するためにも、自らが知るべき自衛隊の運用や能力、装備などの軍事情報について、専門的な知見を持つ幹部自衛官から、しっかりと吸収する機会を持たなければならないと思うからだ。本稿では健全な政治による軍事の統制を実行するために、制服組を排除するのではなく、積極的に活用する手立てを提示してみたい。

文官統制という長年の悪しき慣行

 まず前提として、自衛官の国会答弁を禁じた法律などなく、自衛官が国会答弁をしない慣行は文民統制とは関係ないということだ。ではなぜ答弁する機会がなかったのか。

 発端は、防衛省の前々身である保安庁ができた1952年、当時の吉田茂首相の指示で、背広組と呼ばれる内局の官僚が、制服組の幕僚監部を監督する訓令が設けられたことだ。陸海空自衛隊が創設された54年以降も、保安庁当時の訓令に基づき、自衛官が内局の官僚を通さずに、国会や首相官邸などと直接やり取りすることは禁じられてきた。

 59年12月の衆院内閣委員会で、自衛隊戦闘機の機種選定を巡って航空幕僚長が答弁した例はあるが、当時はイデオロギーが対立する55年体制下で、自衛隊は憲法違反との指摘もあり、政治家は自衛隊と距離を置き、政治が軍事に優先する本来の文民統制ではなく、内局の官僚(文官)が自衛隊をコントロールする文官統制が続いてきた。88年の衆院予算委員会で、竹下登首相は「内局には制服をコントロールする機能がある」と答弁している。


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