2025年4月16日(水)

21世紀の安全保障論

2025年3月7日

統合司令部発足が絶好の機会

 もちろん解決策はある。しかも今がその好機だ。まもなく防衛省に「統合作戦司令部」が新設されるからだ。自衛隊を指揮する自衛官のトップは統合幕僚長だが、2011年の東日本大震災で、当時の折木良一統幕長は被災者救援や原発事故対応など自衛隊の活動を指揮すると同時に、首相や防衛相を補佐し、米軍との調整にもあたった。

 筆者は当時、折木氏が「自衛隊の指揮と首相や防衛相の補佐という二役を担ったが、とても難しく、重い仕事だった」と語っていたのを鮮明に覚えている。そして、折木氏が訴え続けた「統幕長が指揮と補佐という二役を担い、部隊運用に手間取ることがあれば致命的な結果をもたらしかねない」との危惧から創設されるのが、統合作戦司令部であり、そのトップとして部隊運用を担う統合作戦司令官が誕生する。

 二役を担ってきた統幕長の負担が減るということであり、統幕長と統合幕僚監部は、軍事専門的な観点から首相や防衛相を補佐するという幕僚としての機能が鮮明となり、政治の意思決定を支える任務により注力できるということだ。平素から米議会では公聴会などの場で、議会の求めに応じて米軍幹部が国防や安全保障の諸課題について率直な意見を述べたりしており、同じことが日本の国会や各委員会でも可能になるということだ。

実現には国会に秘密会の設置が不可欠

 ただし実現には課題もある。自衛官が専門的見地から国防や安全保障の問題を説明するには、特定秘密の内容に触れなければならない場合も出てくるだろう。

 その場合には、政府内で提供する情報を精査した上で、国会議員に守秘義務を課した秘密会を開き、国家機密を含む情報に基づき、国会議員が政治判断を下すというシステムの構築が肝要だろう。事案によっては、事後に国会が検証する必要もあり、守秘義務を課した国会議員に十分な情報を提供することで、政治による軍事の統制が担保できるはずだ。

 自衛隊は創設以来、1度も必要とされる定員を満たしたことがないなど、まずは現場の声に国会議員が耳を傾けることだ。戦後の民主主義国家としての歩みを踏まえれば、これ以上自衛官を国会から遠ざけておく必要などない。国会議員はもっと謙虚に、国防について、そして有事について学ばなくてはいけない。

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