2025年4月22日(火)

Wedge OPINION

2025年4月15日

 米国のブッシュ政権で国務副長官を務め、知日派の重鎮として知られたリチャード・アーミテージ氏が4月13日、死去した。共和党政権きってのアジア通で、たびたび日本を訪れ、日米同盟の強化に尽力した。
 「日米が堅固な同盟を保ってこそ、アジアの平和は保たれる」。『Wedge』誌2010年8月号で、中国との調和のために日米の協力の必要性を訴えていた。トランプ政権による外交、中国の脅威が高まる中で、今一度知っておく必要がある。記事を特別公開する。(肩書は当時)
日米同盟の重要性を繰り返し訴えていたリチャード・アーミテージ氏(AP/アフロ)

 〝凍結状態〟にあった日米関係のカゲで、ここぞとばかりにチャンスを嗅ぎ取った中国。2010年の4月には、10隻もの艦艇に宮古海峡を通過させるなど、対日挑発を繰り返している。これを見過ごすことは、日米そして中国、だれの利益にもならない。

 日本人よ目を覚ませ、と、米国きっての対日同盟重視論者が呼びかける。日米が堅固な同盟を保ってこそ、アジアの平和は保たれるのだ、と。

好機を嗅ぎ取った
中国軍の艦隊行動

 日米関係は8カ月間以上にわたって、基本的に凍結状態にあった。残念なことに、世界はその間凍結していたわけではなく、先へ進んでいった。今の時代、同じ場所にとどまることは、後退することを意味する。

 日米両国は普天間基地移設問題に関する議論にすべての時間を割く羽目になり、それ以外の重要な問題に関心を向ける余裕が全くなかった。双方がミスを犯したとはいえ、ここでは、日本で事態が展開していく中で、何が米国人を混乱させたのか記しておきたい。まず、米国側は一度として、なぜ辺野古基地が受け入れられないのか説明されなかった。どうやら、辺野古への基地移設が受け入れられない理由は、移設合意をまとめたのが自民党である点にあったようだ。実際、私はある民主党議員からはっきりそう聞いた。

 次に、米国人にとっては、日本の首相が現行案に代わる選択肢を持たずに日米合意を破棄するということが、理解しかねることだった。

 第3に、首相が普天間問題について態度を表明する前に、日本から何人もの関係者がやってきて米国政府に接触しては、「鳩山由紀夫首相お墨付きの計画」なるものを持ち込んだ。ところが実際は、どれ一つとして首相の計画ではなかったようだ。日米共同声明が発表された今、いかなる代替案も真剣に検討されなかったことがいよいよはっきりした。時間と労力が浪費されたのである。

 第4に、私の知る限り、アジアの大半の国が日本政府に対して、日米関係の膠着状態を早急に解決するよう要請したにもかかわらず、その間、日本側には切迫感が一切感じられなかった。

 どれも孤立した世界の中で起きたことではない。実際、この膠着状態の背景にあるものは、示唆に富んでいる。鳩山氏が首相を辞任し、新内閣が発足した今、我々がひとところに立ちすくんでいた間に世界で何が起きたのか、しっかり検証すべき時だろう。

中国は日米同盟を取り巻く冷え切った環境にチャンスを嗅ぎ取り、以前より大きな自信と押し出しをもって行動した。10年前、中国の指導者たちは不満をかこち、米国のおかげで、日本は再び台頭し、攻撃的な国になりかねないではないかと言っていたものだ。ところが今、中国政府は毎週のように、些細な行動から派手な行動まで、実に様々なやり方で日本政府の決意を試しているように見える。


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