2025年1月8日(水)

21世紀の安全保障論

2025年1月7日

 今から10年前の2015年、「反ファシスト戦争勝利」を主張する中国は、年明け早々に戦後70年の式典開催を呼びかけ、国連安全保障理事会の場で、王毅外相は「過去の侵略の犯罪をごまかそうとする者がいる」と述べ、暗に日本を批判した。予兆はあった。その前年の9月、中国の習近平国家主席は9月3日を対日戦勝記念日とし、「侵略の歴史の否認や歪曲、軍国主義の再来を許さない」と日本を強く批判していたからだ。

 それから10年。違法なウクライナ戦争で孤立するロシア・プーチン大統領を「友」と言って支援する習主席は、日本周辺海空域でロシアとの軍事行動を加速させている。その一方で、中国国内はコロナ禍から続く経済の落ち込みが激しく、失業率は急増し、非道な凶悪事件も相次いだ。そうした国内の社会不安を一掃する手立てとして、人民の怒りの矛先を日本に向けさせようとするのは、中国共産党の常套手段でもある。

2024年のBRICS首脳会議で顔を合わせた中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領(右)。2国間の距離は縮まりつつある(代表撮影/ロイター/アフロ)

 戦後80年を迎えた2025年、日本は現状変更を目論む中国とロシアによる歴史戦を覚悟しておかなければならない。本稿では、中露が連携して仕掛けてくる歴史戦を具体的に想定するとともに、日本に必要な対応を考えてみたい。

中国に媚び、足並みそろえるロシア

 国連憲章(国際法)を無視し、22年2月にウクライナを侵略したロシアを、中国は正当化し、世界は中露と日米欧など旧西側諸国とに分裂してしまった。ウクライナ侵略を機に繰り返される中露首脳会談と共同声明を読めば、その溝の深さは明らかだ。

 声明は軍事協力を優先した内容で、24年5月の会談でプーチン大統領は「アジア太平洋地域に閉鎖的な軍事、政治同盟の居場所はない」と述べ、日米韓の連携を批判、習主席も「中露関係の発展は地域と世界の平和に資する」と呼応している。

 ロシアは違法な侵略に対して制裁を課す日米欧を「非友好国」に指定し、中国と歩調を合わせながら、脆弱だとみなした日本を標的にさまざまな圧力をかけ続けている。

 ロシアは22年9月、初めて中国の陸海空軍がそろって参加する軍事演習「ボストーク2022」を、北方領土の国後、択捉両島を含む地域で実施したのに続き、23年6月には、それまで9月2日だった「対日戦勝記念日」を中国と同じ9月3日に変更し、名称も「軍国主義日本への勝利と第2次大戦終結の日」に変えてしまった。サハリン(旧樺太)で開かれた9月の式典にはメドベージェフ前大統領が出席し、択捉島では軍事パレードが行われたと伝えられている。

 その翌10月には、プーチン大統領の訪中に合わせ、東京電力福島第一原発の処理水放水に対し、ロシアは日本産海産物の輸入禁止を発表、24年5月には、習、プーチン両氏は「核汚染水の海洋放出に深刻な懸念を表明」との声明を出している。処理水は国際原子力機関(IAEA)の安全基準を満たしているにもかかわらず、依然として「核汚染水」と批判し続ける中国に寄り添った格好だ。


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