2025年4月2日(水)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年3月30日

(2024.10.8~12.29 83日間 総費用24万1000円〈航空券含む〉)

マイソールの下町、畳一枚ほどの土間で細工する宝飾加工職人

マイソールの下町の金細工工房のひとつ。黙々と微細な作業をしていた

 11月2日。マイソールのメインストリートはヒンズー教最大のお祭り“ディワリ”で賑わっていた。お祭りセールを目当てに近隣の農村部からも買い物客がマイソールに来る。特に金銀ダイヤを扱う宝飾店はサリーで着飾った婦人たちで溢れている。

 裏通りを歩くと数百軒の零細宝飾加工工房が軒を連ねていた。大半の工房は畳一枚ほどの土間に1人の職人が座って黙々と作業していた。

 後日カリカット在住のゴールド・ディーラーの青年に聞いたらカリカットがインドの金細工の中心地でありカリカット空港の裏手に金細工工房が密集しているという。ドバイ⇒カリカットは金の密輸ルートでもあり、そうした背景から金細工産業が発展したという。

 2023年インドの輸出統計で石油製品、機械類に次いで第三位は宝飾品であり輸出全体の8%弱を占め327億ドルである。零細な細工業者がインド全体では巨大産業を形成しているのだ。

インドの伝統的庶民金融はゴールド・ローン

フォート・コチ地区の通りのゴールド・ローンの店。金買取価格5500ルピーと電光掲示板に表示されている

 11月7日。フォート・コチ地区のメインストリートを歩いていてゴールド・ファイナンスとかゴールド・ローンという看板の店が数百メートルの間に二十数軒もあった。3人のインド娘がいる店で聞いたらインド庶民金融が見えてきた。

 インド人、特に女性はやたら金の宝飾品をジャラジャラ身に着けているがお洒落だけでなく頼りになる流動資産なのだ。生活費や突然の出費など当座のお金の工面のためにゴールド・ファイナンスに担保として預けお金を借りる質草なのだ。金の宝飾品の価値は単純に重量で評価するので客観的だ。毎日国際金相場の動きで変わる。当日は各店ともにグラムあたり5500ルピーを看板に表示していた。3人娘の店は3カ月で18%。年利では78%と“マチキン”並み!

 数日後、海岸通りのローカル銀行を覗いてみたらグラム5710ルピーで3カ月金利は10%だった。さらに1カ月後に上記のカリカットのゴールド・ディーラーの青年に聞いたら、彼はゴールド・ファイナンスも兼業しており、カリカットでは3カ月金利10~15%が相場とのこと。

有名欧米ブランドの大半はインド製、躍進するインドのアパレル産業

 11月15日。アレッピーの砂浜でローカル・ビールを飲みながら夕陽を見ていたらお洒落な紳士が挨拶してきた。ルークマンはムンバイ在住のカメラマンで、ロケハンのため南インドの絶景ポイントを1週間ばかり巡っていると自己紹介。

 専門はファッション関連のフォトや映像。事前のロケハンで撮影タイミング、移動時間、宿泊場所など動線まで調査する。実際の撮影ではモデル、撮影アシスタント、ヘヤメーク、スタイリストなど大人数になるらしい。

 インドのアパレル産業はレベルが高く欧米有名ブランドの多くはメイド・イン・インディアという。さらにインド人デザイナーによる国産ブランドも国内高級服市場を席捲して海外進出を狙っていると解説。

「舌平目は直行便で英国へ」ヨーロッパへの高級魚輸出で稼ぐ地元漁民

アレッピーの浜辺に引き揚げられた漁を終えた漁船。漁師たちは椰子の木陰でポーカー賭博に興じている

 11月16日。アレッピービーチを散歩していたら、この周辺一帯の近隣の漁村から海産物を買い取り海外へ輸出しているという陽気な中年男にあった。近年は欧州の物価高により輸出が急増して忙しいらしい。

 ヨーロッパ主要空港への航空貨物運賃はキロあたり3ユーロ50セント(≒240~250円)だが十分にコストをカバーして儲かるという。英国・欧州の物価高でレストラン向けの注文が殺到。舌平目は英国で引っ張りだこで漁師は収穫すると最優先で氷詰めしてトラックに載せ空港へ送るらしい。鮮度が勝負なのだ。

 以前は中国向けが大きかったが、外交関係悪化のあおりを受けて激減、現在では往時の10分の1しかないと嘆いた。中国向けは政治リスクがあるので期待できない。現在日本市場への新規参入にむけ商談を進めていると目を輝かせた。近海で獲れるマグロが目玉商品らしい。インドの鄙びた漁村が海外の高級レストランと直結しているのだ。

ITエンジニアのファミリー・ビジネスは“マンゴと薔薇の輸出”

 11月21。コーラムの静かな入り江のホステルでムンバイ近郊の都市プネ在住の職場の同僚という2人のITエンジニアに会った。プログラム制作の仕事は神経を消耗するので気分転換に2週間の休暇中。しかし休暇中でも数日間はパソコンに向かっているという。

 1人は実家の農家が特産のマンゴを栽培している。マンゴは収穫時期が微妙なので1つひとつ熟れ具合をチェックするらしい。収穫したら店頭に並ぶまで数日以内に抑えないと売り物にならないので収穫期に入ると毎日時間との勝負という。各農場で収穫して箱詰めされたマンゴを集荷してまとめてドバイに空輸。ドバイからUK、EU、米国へ送られる。彼はこの物流全体を得意のシステムでコントロールしている。

 さらに実家の農場で栽培した薔薇の輸出も手掛けている。温室で温度管理して1年中出荷できるようコントロール。毎日薔薇の花をカットしてからマンゴ同様にドバイ経由でUK、EU、中東各地に到着するまで24時間以内がタイムリミットという。まさに『Time is Money』だ。

経済成長で広がるグラフィック・デザイナーのお仕事 

 11月22日。コーラムのホステルでムンバイ在住のグラフィック・デザイナーの女性と会った。企業ロゴ、アニメキャラクター、ブランディングや変わったところではタトゥーシールなど手掛けている。10年近いキャリアがあり現在はフリー。

 最近クライアントから指定される納期がどんどん短くなっているという。経済発展により商品開発・新規事業展開などビジネスの競争が激化していることが納期短縮要求の背景にあるらしい。

ファッション・カメラマンのルークマンと古希爺さん

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