2025年12月14日(日)

Wedge REPORT

2025年12月3日

 訪日外国人旅行者の増加とともに、日本の免税制度はこの10年で急速に拡大してきた。2012年に約836万人だった訪日客は、25年には4000万人を超えると予測されており、ショッピングはゴールデンルートを中心に旅行消費の柱となってきた。今後は地方分散、体験価値への転換、高付加価値化等が課題となっているが、ショッピングは引き続き重要な要素である。

(chris-mueller/gettyimages)

消費底上げも3つの構造的な問題

 消費税免税制度は本来、短期滞在の外国人旅行者が購入した商品を国外に持ち出す際、日本国内の消費税を免除する仕組みである。化粧品、家電、医薬品、衣料品など、いわゆる「爆買い」を支えたのがこの制度だった。

 14年の制度改正で免税対象が大幅に拡大し、訪日客の買い物体験は世界的に見ても高い利便性を誇った。購入時点で消費税が差し引かれる「店舗免税方式」が主流で、手続きはシンプル。旅行者は「日本で買えば1割安い」という即時の価格メリットを享受できた。その結果、外国人観光客の免税販売額は23年に約1.5兆円規模に達し、小売、宿泊、交通、地域経済全体を押し上げた。

 しかし、制度の急拡大の裏では、いくつかの構造的な脆弱性が浮き彫りになっている。その代表が、①徴課後の未回収問題、②国内転売・買い子スキーム、③高額購入者の検査逃れ、である。

 ①に関しては、国税庁や財務省、日本チェーンドラッグストア協会の公表資料によれば、22年度に「1億円以上購入した免税購入者」57件を税関が検査した結果、56件が課税処分となり、納付はわずか1件(滞納率96.5%)。賦課決定額18.7億円のうち18.5億円が未回収で、制度全体でも課税決定20.7億円中20億円が滞納とされている。

 つまり、免税販売後に商品が国内消費・転売されても追徴税の徴収がほぼ不可能であり、「国外持ち出し」を前提とする制度の実効性が極めて乏しい。

 ②の問題も悩ましく、日本総合研究所(JRI)や中国メディア「SheChina」によれば、外国人ブローカーがSNSで「買い子」を募集し、複数の免税店を巡らせて高額商品を購入・転売する事例が多数確認されている。短期滞在者だけでなく、留学・技能実習などの長期在留者による悪用も多い。

 さらに、販売側の審査不足も深刻だ。大手百貨店では外国人客3人が約3.6億円を購入し、免税適用されたが、実際には国内居住者で後に課税対象とされた。販売現場の判断ミスが制度の抜け道を拡げている。


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