2025年12月5日(金)

Wedge OPINION

2025年9月24日

 生活の必需品である住宅価格の高騰が止まらない。もともと先進国では、低金利・都市化の進展を背景に住宅価格が1990年代後半以降、日本では2010年代後半から不動産価格が上昇する傾向にあった。コロナ禍を経てさらなる住宅価格高騰が起こり、首都圏の新築マンション価格は平均1億円を超えた。

手頃な住宅が買えなくなりつつある都市圏において、誰も住まない「空き家」が増加している(©MARCO BOTTIGELLI/GETTYIMAGES)

 住宅価格は、住宅に対する家計の需要と供給の関係で決定される。しかし、住宅の需要と供給は住宅サービスに関する実需の側面だけではなく、不動産資産という側面もあるため、金融市場の影響を必ず受ける。つまり、住宅は株式や債券と同様、将来の価格上昇が見込める資産として、家計のみならず投資家の投資対象となる。「必需品」である住宅が「投機」の対象となって、家計の住宅取得が妨げられる可能性があることに大きな批判が寄せられる。

 特に近年、外国人投資家が投資物件あるいはセカンドハウスとして物件を所有するケースも多く、それに伴って発生する住宅需要が、住宅価格高騰の一因だという指摘が行われることもある。しかし、資本移動もサプライチェーンもグローバル化し、激しい人口減少にさらされている日本では、ヒト・モノ・カネのいずれをも海外からの流入を予定しなければ、経済、社会を保つことが難しいという現実を、まず認識しておく必要があるだろう。

 それでも国民や地域社会で困っている点があるとすれば、それを丁寧に拾い上げることは必要である。

 国民の住宅取得、賃貸に対する相対的なアクセス可能性を「アフォーダビリティー」と呼ぶが、現在、大都市を中心に起きていることは、手頃な住宅を購入できない「アフォーダビリティー・クライシス」であり、我々はこうした状況をもっと深刻に捉えるべきではないか。


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