2026年3月16日(月)

Wedge REPORT

2026年3月16日

 インバウンドの回復とともに、日本の観光産業は再び「成長産業」として語られるようになった。2025年のインバウンドの旅行消費額が約9.5兆円になり、政府目標の15兆円も現実的な目標値と認識されてきたようである。

(mapo/gettyimages)

 円安、国際線の回復、アジアを中心とした訪日需要の拡大を背景に、宿泊・飲食を中心とする観光関連需要は中長期的にも伸びる可能性が高い。インバウンドで50兆円を目指せると指摘する一部の識者もおり、個人的にはこの後一旦停滞期を経てインバウンドは20兆円を超える可能性はあり、国内旅行消費と合わせて国内の旅行市場が40兆円超の産業になる可能性は十分にあると思っている。

 だが同時に、現場では深刻な人手不足が顕在化しつつあり、成長の大きな拘束要因になってきた。フロント、清掃、調理、配膳といった基幹業務で人が集まらず、需要があっても稼働を制限せざるを得ないケースも散見される。

 この「人手不足」を単なる労働力不足として捉えるのは危険である。問題の核心は、「この賃金水準、この働き方では人が来ない」という魅力不足である。

 日本の観光産業、とりわけ宿泊・飲食業は、30年以上にわたり「低賃金・長時間労働」という構造を放置してきた。その結果、需要が回復しても供給が追いつかないという、成長産業として致命的なボトルネックを自ら作り出しているのである。

世界的な潮流でも、日本は特に深刻

 まず押さえるべきは、観光産業の人手不足は日本固有の問題ではないという点だ。国際的な業界団体や政策機関の予測では、今後10年で観光需要は拡大する一方、必要な労働力の供給が追いつかず、世界全体で数千万人規模の不足が生じる可能性が指摘されている。特に宿泊・飲食といった対人サービス分野は、他産業との人材獲得競争が激化しやすい。

 その中でも、日本は状況がより深刻化しやすい。背景にあるのは急速な人口減少と高齢化である。全産業で人手不足感が強まる中、賃金水準が相対的に低い観光産業は、若年層や専門人材から選ばれにくい。

(出所)令和6年賃金構造基本統計調査を基にウェッジ作成 写真を拡大

 実際、観光・宿泊業の賃金水準は全産業平均を大きく下回り、非正規比率も高い。これでは、需要増局面で真っ先に人手不足が顕在化するのは当然だ。


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