日経平均株価はついに5万円の大台を突破した。表面的には、円安、金利差、高市早苗政権への期待という「マクロ要因」で説明されることが多い。
高市政権は「責任ある積極財政」と「金融政策との連携強化」を軸に、経済成長・実質所得改善・構造転換を狙う政策が打ち出している。こうしたマクロ要因も重要なのだが、その底流で企業そのものの変革が起きつつあることにも着目する必要がある。
筆者はWedge ONLINEでは観光関連の記事が多いが、もともとの専門は企業の経営戦略であり、日本の企業で起りつつある静かな革命に関してお話したい。
背後で起こる「静かな革命」
必要な変革ができず事業が停滞しがちな企業を「JTC(ジャパン・トラディショナル・カンパニー)」と呼ぶことがある。しかし、日本の企業をよく見てみるとその中に、伝統的な「合意重視」「前例踏襲」から一歩踏み出し、毅然とした(Resolute:リゾリュート)決断をもって変革を実行している企業が出てきており、それが株価上昇の基盤になっている。
海外の投資家や経営学者たちは、この動きを冷静に見抜いている。筆者は米ウォートン校のハビール・シンとマイク・ウシームという経営戦略とリーダーシップ分野の看板教授との共同研究で、日本を代表する各分野の大手企業、企業の社長・会長100人以上にリーダーシップ、戦略、ガバナンス、組織運営等をインタビューした。
その結果、米国、インド、中国等で同様の調査をしてきた両者から、日本にはまだ少数なのだが世界的に通用する経営を実践しつつある企業群があることを指摘され、そのエッセンスを「リゾリュート・ジャパン(RJ)モデル」と名付け、海外に伝えるべく昨年、Wharton Pressから『Resolute Japan』という書籍を出版した。今年9月には、その翻訳版に日本企業向けの第9章を加筆した『ジャパン・ウエイ:静かなる改革者たち』(日本経済新聞)を出版した。
