2026年3月10日(火)

21世紀の安全保障論

2026年3月9日

 米国とイスラエルによるイラン攻撃は、米国のトランプ大統領が「攻撃が4~5週間に及ぶ可能性がある」と発信したように、長期化する恐れが出てきている。ホルムズ海峡封鎖が及ぼす影響にとどまらず、米中が急接近するというリスクも想定され、日本を標的とする中国の軍事的かつ経済的な嫌がらせが高まる可能性がある。日本は直面する外交、安全保障上の厳しい試練をどう乗り越えていけばいいのだろうか。

高市首相(左)はイランを攻撃したトランプ大統領と関係を築けるか(dvids)

トランプ氏が避け続ける中国批判

 少し時計の針を戻してみたい。イラン攻撃を直前に控えた2月24日、トランプ氏は米議会で一般教書演説に臨み、イランについて「世界最大のテロ支援国家が核兵器を持つことは絶対に許さない」と述べるなど対決姿勢を鮮明にした。その4日後に武力攻撃に踏み切ったわけだが、演説でトランプ氏は、同盟国の日本にとって最大の脅威である中国については一言も触れなかった。

 トランプ氏の対中姿勢は昨年秋から一貫しており、昨年10月、韓国で行われた米中首脳会談を前に、トランプ氏は台湾の頼清徳総統の訪米を認めず、首脳会談では台湾問題に一切触れなかった。その後、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁で日中間の緊張が高まることになるが、トランプ氏は中国の習近平国家主席との電話会談を終えた後、高市氏に電話をかけ、「台湾問題で日本により慎重になるように助言した」(前米国務副長官・カート・キャンベル氏)という。

 さらに昨年12月、トランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」でも中国の軍事的脅威を指摘する言葉は見当たらず、「米国が世界秩序を支える時代は終わった」と宣言し、安全保障においてグリーンランドを含む南北米大陸を中心とする「西半球」を重視する方針を打ち出している。

 こうした流れの中で迎えた一般教書演説だったわけだが、中国に関する発言だけでなく、日米同盟の重要性やインド太平洋における米国の役割についての言及も皆無だった。まさにイラン攻撃は、これからの国際秩序をどう守っていくのかが極めて曖昧な状況の中で引き起こされてしまった。


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