「高市早苗がこの国の首相でいいのか」を問う衆院選は2月8日、投開票が行われ、自民党が単独で定数の3分の2を上回る316議席を獲得、有権者は高市首相の継続を選択した。ロシアのウクライナ侵略以降、国際秩序は揺らぎ続け、国民の危機意識が高まる中で行われた選挙であったが、多くの国民は安倍晋三元首相の後継を自認する高市首相の価値観と安全保障観に1票を投じた結果だと言える。
懸案は国内外に山積している。だが、本稿では台湾有事を巡る高市首相自らの発言をきっかけに日中関係の悪化が長期化し、しかも、米国のアジアへの関与に不安感が生じている局面だからこそ、国民の負託に応えるために必要な高市外交について考えてみたい。
突然の解散の背景
読売新聞が1月10日の朝刊で「首相 衆院解散検討」のスクープを報じ、今回の選挙戦は始まったが、その背景を取材してみると、複数の政府関係者が口を揃えたのが、中国が1月6日、レアアース(希土類)を含め日本へのデュアルユース(軍民両用)製品の輸出禁止を発表したことが、解散を決断する引き金になったという。
台湾有事を巡る首相発言を機に、中国は日本への渡航自粛や日本産水産物の輸入停止などの対応を取ってきたが、政府関係者は「軍民両用製品の輸出禁止は経済的威圧のレベルが違う。日本だけの問題ではなく、米国を含め多くの国々のサプライチェーン(供給網)に影響を与えかねない」と説明する。
政府は直ちに抗議し、禁輸の撤回を求めたが、中国は「我々は日本側に問題の根源を直視するよう求める」と突っぱね、改めて首相答弁の撤回を要求してきた。軍事力に加えレアアースの規制など経済力を武器化する中国には、日本を屈服させた前例があるからだ。
2010年の沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件で、当時の民主党菅直人政権は、レアアースの輸出規制や邦人拘束などの圧力に屈し、逮捕した中国人船長を釈放してしまった。「二度と日本は脅しに屈してはならない。そのためには安倍元首相のように政権基盤を安定させ、中国と向き合う必要がある」(政府関係者)という判断に至ったのでは――と説明する。
高市首相の失脚を目指してきた中国にとって、今回の選挙結果は大きな誤算だろうが、強固な政権基盤を得た高市首相にとっては、まさにこれからが正念場だ。
