中国は昨年末、「台湾の独立分裂勢力と外部干渉勢力に対する重大な警告だ」との声明を発し、台湾を包囲する大掛かりな軍事演習を実施した。ミサイルなどの実弾射撃を含む演習を強行した背景には、米国のトランプ政権が過去最大規模となる約1兆7000億円に上る台湾への武器売却を決めたことへの反発や、日本による台湾有事への介入を阻止する狙いがあるとされている。だが、それらは演習を正当化させる中国の口実に過ぎない。
国内でも「高市早苗首相の国会答弁がきっかけとなって日中関係が悪化している」との主張が、メディアやSNS上で拡散されている。もちろん「存立危機事態」をめぐる発言は、予算委員会という緊急性もない公開の場で、しかも、首相という立場で発しなければならなかったのかと言えば、首相自らが「今後は慎もうと思っている」と述べたように、「失言」だったことは明らかだ。
しかし、本当に発言がきっかけとなって日中関係は悪化しているのだろうか。それとも対日威圧が常態化し、私たちがそれに慣れてしまっているのではないだろうか。それを確認することが中国の仕掛ける世論戦に抗う第一歩になると思う。
常態化を狙う中国の対日威圧
まず最近の日中関係を振り返ってみよう。石破茂政権発足前の2024年夏、日中間で何が起きていたのか。
8月26日に中国軍機が初めて長崎県沖の日本領空を侵犯したのに続き、同月31日には中国海軍の測量艦が鹿児島県沖の領海内に侵入している。しかも、満州事変の発端となった柳条湖事件(1931年)の起きた9月18日には、空母「遼寧」を含む3隻の中国海軍艦が沖縄県沖の接続水域内を初航行し、同じ日には中国・深圳市で日本人学校に通う10歳の男児が中国人男性に刺殺される事件が発生している。
こうした状況下で、メディアは当時、「戦後最悪ともいえる日中関係の下で石破丸は船出する」などと表現していた。
