フランスのマクロン大統領が12月3~5日に、国賓として中国を訪問した。大統領として4回目の訪中で、中国政府から格別の歓迎を受けた。
仏中の蜜月を演出した形となり、中国の王毅外相が台湾問題における支持を求めたことが日本でも伝えられた。フランスによる中国訪問の意図はどこにあったのか。これを読み解くのは、台湾有事発言で日中関係の緊張が増す高市早苗政権のヒントになるとも言える。
欧州は経済重視
今回のマクロン訪中の最大の目的が、仏中貿易不均衡の是正と貿易・投資拡大にあったことは確かだ。大統領に同伴したのは、水処理分野のヴェオリア、フランス電力(EDF)、航空機大手のエアバス、環境サービスのスエズといった大企業に加えて、ダノンなど食品関連企業、レミー・コアントローなどワイン・蒸留酒ブランド、さらにはクラブメッドのような高級・観光産業グループの企業代表まで含まれた。
中国との貿易摩擦・不均衡構造の改善はフランスはじめ欧州連合(EU)にとって喫緊の課題だ。フランスの対中貿易赤字は2022年の550億ユーロからやや減少してきているとはいえ、24年には470億ユーロに達し、この10年でほぼ倍増した。貿易赤字の約半分は中国からの輸入だ。
中国からの輸入超過の背景には、米国市場に入れなくなった中国製品の一部が、ヨーロッパ市場に流れ込んでいることもある。典型的な例は、米国への輸出が止まっている中国製鉄鋼が欧州へ流れていることだ。加えて比亜迪(BYD)や上海汽車(SAIC)傘下であるMGの電気自動車、SHEIN(シーイン)やTemu(テム)、アリババなどの低価格商品部門の仏市場進出は消費者の眼にも歴然たるものがある。
フランスは26年夏に仏エビアンで開催される主要7カ国(G7)議長国として、適正な国際的通商ルールの在り方などを含む世界主要経済国間での貿易の「再均衡」を主要テーマとする予定だが、実際には再生可能エネルギー、運輸、通信分野など中国系の企業が国内に250社以上も存在するという現実がある。
