東京に招かれた中央アジア5カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)の首脳は12月20日、日本政府と「CA+JAD」(Central Asia Plus Japan Dialogue、通称「カジャッド」)首脳会談に臨み、議長をつとめた高市早苗首相との間で「東京宣言」を発表した。これに先立つ18日からは、高市首相と各国首脳との個別会談も相次いで開催され、連携強化や戦略的パートナーシップの深化が確認されている。また、同期間には日本と中央アジア5カ国のビジネス・フォーラムも開催され、約150件以上の協力覚書が交わされており、今後5年で3兆円規模の各種プロジェクトが始動すると見込まれている。
「東京宣言」では、経済強靭性、環境、コネクティビティ、AI、人材開発などを主軸に、日本と中央アジア5カ国の協力・連携強化が確認された。注目すべきは、「カスピ海ルート」と呼ばれる、西方向での新たな物流・経済回廊の整備構想である。
中央アジア5カ国には、歴史的経緯からは北のロシア、新たなパートナーとしては東の中国との関係が重要であるが、同時に、両国に依存しすぎないバランスを模索している。新たな物流・経済回廊の整備はこの要請に応えるもので、「豊富な資源およびエネルギー源に恵まれた中央アジアが、グローバルな経済強靭性を高めるために、国際市場へのアクセスを拡大すること」(高市首相)に資する。それは同時に、昨今の中国との摩擦のなかで、重要鉱物資源のサプライチェーン強靭化が喫緊の課題となる日本にも意味をもつ。
無論、今回の「東京宣言」の内容には、特定国への対抗を伺わせる文言などは一切盛り込まれていない。むしろ高市首相が述べたように、「5カ国の持つ高い潜在性を活かして産業高度化を後押しし、互恵的な協力関係を一層引き上げる」ため、あくまでも中央アジア5カ国の経済発展や社会課題における、ガバナンスやエコシステムの開発・支援を謳っている。
しかしそこには、中国の「一帯一路」が、相手側に立ってその潜在能力を引き出そうとするのではなく、また持続可能性などに配慮することもなく、圧倒的な資金や規模にまかせて開発を行うことに対し、日本の異なる理念と実践を提示したものである。それが「日本に対する強い信頼と大きな期待を感じた」(高市首相)という、今回の首脳会談における手応えに結び付いているのは間違いない。
