2025年12月6日(土)

教養としての中東情勢

2025年7月10日

 ロシアのプーチン政権は7月3日、アフガニスタンのタリバン暫定政権を正式承認したと発表した。タリバン政権の承認は世界初。国際社会に先駆けて正統政権と認めた背景には、アフガンのレアアース獲得競争に本格的に参入したいロシアと、麻薬禁止で落ち込んだ経済を早急に立て直したいタリバンの思惑が一致したという事情がある。

ロシアがタリバン暫定政権を世界で初めて正式承認した(同政権外務省Xより)

ケシ栽培禁止で経済的苦境に

 タリバンが復権したのは2021年8月。米国のバイデン政権(当時)が米駐留軍の完全撤退を決断したことにより20年続いた米国の「最も長い戦争」が終わりを告げることになった。撤退時の8月26日には、カブール国際空港付近で自爆テロが発生し、米軍兵士13人を含む約180人が死亡するなど大混乱したのは記憶に新しい。

 その後タリバンは最高指導者アクンザダ師を頂点とするイスラム指導体制を発表。イスラム法「シャリア」に基づいた統治を開始し、旧政権時代に女性を抑圧した「勧善懲悪省」を復活させ、中等教育以上の女性の通学禁止、大学での女子教育停止、非政府組織(NGO)の女性職員の出勤停止など女性に対する抑圧政策を次々と進めた。

 その一方でタリバンは22年シャリアに照らし、同国の主要な産業であった「麻薬の栽培と使用」の禁止に踏み切った。麻薬の原料であるケシ栽培では一時世界の80%を占める一大生産地だった。ケシの栽培面積は最盛期には23万2000ヘクタールにまで拡大したが、現在は推定95%も減少した。

 世界銀行などによると、同国の農家はケシの栽培禁止により大打撃を受け、13億ドルを喪失した。国内総生産(GDP)も8%減少し、45万人の雇用が失われた。経済はこの2年間で実に26%も落ち込むことになった。


新着記事

»もっと見る