2025年7月10日(木)

教養としての中東情勢

2025年7月2日

 米国のトランプ大統領は6月27日、「イランがウラン濃縮を続ければ再び攻撃する」と警告した。イランがトランプ氏の「核協議提案」に否定的な見解を示したことに怒りをぶつけた形だ。

トランプ大統領はイラン攻撃後の展開に怒りを募らせている(代表撮影/ロイター/アフロ)

 だが、米国のイラン攻撃後、核爆弾製造に容易とされる濃縮ウランの行方は謎のままだ。双方が突っ張り合う中、「イラン危機第二幕」のカウントダウンが始まった。

消えた濃縮ウランと秘密の核施設

 大きく言って問題は2つだ。1つはナタンズ、フォルドウ、イスファハンにあったイランの主要な核施設3つが「完全に破壊された」(トランプ大統領)のかどうか。もう1つは攻撃前に貯蔵されていた濃縮度60%のウラン約400キロの行方が不明な点だ。核爆弾9個分を製造するのに十分な量だとされる。

 トランプ大統領は行方が知れない濃縮度60%のウランについて「あまりに量が多く、短時間では持ち出し不可能」と主張、破壊されたがれきの下に埋もれていると強調した。だが、CNNなどが国防情報局の分析として伝えたところによると、濃縮ウランは攻撃前に持ち出されたと指摘、イラン当局者もフォルドウとナタンズの施設から濃縮ウランの8割を搬出したと証言している。

 そもそも濃縮度60%ウランがどの施設に貯蔵されていたのかもあいまいだ。トランプ氏は山中に建設されたフォルドウの核施設であることを示唆しているが、国際原子力機関(IAEA)はイスファハンの施設だとしている。米軍の地中貫通弾による攻撃が行われた6月22日の数日前には、フォルドウやイスファハンの施設に多くの車両が出入りしていたという。

 IAEAのグロッシ事務局長は「イランは有事の際に持ち出せるよう、濃縮ウランを小分けにしてコンテナに保管していた」と述べている。濃縮ウランが他に移されていたら、施設の破壊はさほど意味を持たない。別の場所で核爆弾に使用する濃縮度90%のウランを製造することは比較的容易だからだ。数週間で核爆弾を保有できる可能性がある。


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