北大西洋条約機構(NATO)首脳会議のために訪れたオランダでトランプ大統領は6月25日、米軍によるイランへの爆撃がイスラエルとイランとの戦争を終わらせたとの認識を示し、「広島を例として使いたくない。長崎を例として使いたくない。しかし、本質的には同じだ」と述べて、第二次世界大戦中の広島と長崎への原爆投下になぞらえる発言をした。今回のイラン攻撃が戦争を終わらせたのは、原爆投下が日本との戦争を終わらせたのと同じだとしたのである。

この発言に対して、日本国内では、原爆投下を正当化するのは許されるべきではないなどと怒りの声が上がった。ノーベル賞を受賞した日本被団協関係者が「原爆投下はどういう理由があってもやってはいけないことで、正当化するような発言には怒りしかない」と述べたのが代表的である。広島市議会はすぐさま「原爆投下を正当化するような発言は看過容認できない」とする決議を可決した。
原爆投下は正当化されるという見解については、日本国内では許容できないという意見が大半を占めている。ところが、米国内では長らく原爆投下は米国の勝利に大きく貢献した、という評価が圧倒的多数を占めていた。
エノラ・ゲイ展示による騒動
その米国において1990年代に原爆投下に関する評価を巡って世間を騒がせる出来事があった。スミソニアンの国立航空宇宙博物館が、広島に原爆を投下したB-29爆撃機エノラ・ゲイの展示を、原爆の被害や歴史的背景も含めて行うことを発表すると大騒ぎとなったのである。
広島や長崎の人々の苦しみも含めた「バランスの取れた再検討」を来場者に促すという展示計画が93年に明らかになると、米国の退役軍人会や空軍協会などを中心に批判の声が巻き起こった。空軍関係の雑誌は、博物館関係者はエノラ・ゲイを「原子爆弾の残虐性をテーマにした偏った感情的なプログラムの道具として」使用するつもりであり、日本人を「故郷と文化を必死に守る人々」として、米国人を「復讐に燃える残酷な侵略者」として描いていると書いて批判した。