2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は日本のインフラが抱える弱点を露わにした。地下約10メートルに敷設された下水道管が腐食により破損し、時間をかけて土砂が流入し空洞が大きくなり、道路陥没につながった。
地下の空洞の検知は現在の技術では難しい。一般的な地中レーダーは地下数㍍までが限界とされる。また、埋設されているのは下水道管だけではない。水道管、ガス管、通信ケーブルなどが自治体の部署や事業者ごとの管理のもとにバラバラに敷設され、情報は一元化されていない。
さらに、近年の気候変動の影響は、下水道の脆弱性を高めている。高温などの原因により管内で硫化水素が発生しやすくなり、硫酸へと変化して管を内側から腐食させる。また、短時間強雨の増加によって管内の流水量は増え、破損箇所の拡大や土砂流入を引き起こす。
老朽化、地震、豪雨が複合するケースもある。老朽化した管が地震でわずかにずれ、その後の豪雨で破損する。あるいは地震による勾配の変化で排水が滞った状態に豪雨が重なる場合もある。3つのリスクの関連性を考慮してこなかった点もインフラ管理の死角といえる。
これらのリスクに対応する体制も、下水道職員がこの約25年で4万7000人から2万6900人へ減少する中では限界がある。必要な点検が追いつかず、実態把握が後手に回る自治体は今後増えるだろう。
