2024年12月9日(月)

Wedge2024年4月号特集(小さくても生きられる社会をつくる)

2024年3月22日

 「能登半島地震」では水道施設に甚大な被害があり断水が続いている(1万8880戸/2月29日現在)。水道事業者は施設や管路の耐震化を進めてきたが、道半ばと言える。

約98%を誇る、日本の水道普及率。その維持にかかるコストも膨大だ(SIRIRAK/GETTYIMAGES)

 1995年の阪神淡路大震災を教訓に「地震に強い水道づくり」を検討した厚生省(当時)水道耐震化検討委員会は「老朽化した水道管を向こう5年以内にすべて耐震性のものに更新する」という提言を出した。2004年にまとめられた「水道ビジョン」には「浄水場、配水池などの基幹施設、基幹管路の耐震化率を100%にする」とある。

 30年にわたる号令にもかかわらず、現在の基幹管路の耐震適合率は41.2%(厚生労働省「水道事業における耐震化の状況〈2021年度〉)にとどまる。この数字はばらつきがあり1位の神奈川県は73.1%だが、最下位の高知県は23.2%と50%の開きがある。能登半島地震で水道被害が大きかった石川県は36.8%で、やはり全国平均よりも低かった。さらに耐震化率の伸びは20年から21年で0.5%程度。財源と人手の不足が影響している。

 水道事業は料金収入の激減から経営難に陥っている。そのため耐震管への切り替え、老朽管の更新が進んでいない。24年1月1日時点の日本の概算人口は1億2409万人で、前年同月から66万人減少した。

 人口減少は水道利用者の減少、利用水量の減少にほかならず、当然、料金収入も減少する。総務省によると料金徴収の対象となる水量(有収水量)は、00年の日量3900万トンをピークに減り続け、65年には日量2200万トンになると予測される。

 水道経営は今後ますます厳しくなる。水道が敷かれた頃は多くの市民に注目されたが、老朽化の実態は社会で共有されているとはいえず、水道は〝孤独死〟寸前である。

 また、水道施設の維持・修繕をする技術者も不足している。コロナ禍で注目されたキーワードの一つに「エッセンシャルワーカー」があるが、水道施設の技術者もそうであろう。だが技術者の待遇面は向上せず、社会を支える人材は不足している。最近は施工事業者の人手不足が深刻で、施設の改修工事の入札が不調に終わることも多い。


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