老朽化した水道管の破裂による漏水・断水が相次いでいる。2018年6月、大阪府北部を襲った地震で、浄水場から市内をつなぐ主要な水道管が破裂し、高槻市、箕面市などで、約9万4000戸が最大2日間にわたって断水した。破裂した直径90センチの主要管は、耐用年数40年を10年以上超過した老朽管だった。
同じく老朽管の破裂により、19年3月には千葉県旭市内約1万5000世帯で2日間断水し、今年1月にも、和歌山市内約3万5000世帯への3日間の断水計画が出された。和歌山市の事例では、工事着手後に当初の想定よりも漏水規模が小さいことが判明したため直前で断水は回避された。しかし、突然の断水計画によって飲料水を買い求める市民がスーパーに殺到し、飲食店や宿泊施設も相次ぎ休業するなど、大きな混乱を招いた。
日本水道協会が発行する水道統計によれば、老朽化による破裂など、全国で毎年2万件以上の管路事故が発生している。
近年、高度経済成長期に整備された水道管の老朽化が進む。水道管路総延長のうち法定耐用年数を超えた管路が占める割合も年々増加し、17年には16.3%にのぼる(右図参照)。
一方、人口減少による財政難や職員不足などにより設備更新は進まない。厚生労働省によれば、全国各地に張り巡らされた水道管路総延長のうち、年間に更新される管路はわずか0.7%にすぎず、その更新率も年々減少している。全国の水道管を全て取り替えるのに140年以上かかるペースだ。
地方のある水道事業者は「度々漏水を起こす老朽管は大体把握しているが、取り替えるための予算が町にないため、一時的に穴を塞(ふさ)ぐ〝いたちごっこ〟の状態だ。しかも、状況は年々悪化する」と、その窮状を語る。
上水道事業は市町村ごとの独立採算が基本とされているため、老朽化した設備の更新費用については住民からの水道料金で賄う必要がある。日本政策投資銀行の試算では、現在の水道施設を維持していくためには、将来の人口減少による水道収益の低下と老朽設備の更新費用の増加により、20年代前半より水道料金を段階的に引き上げ続け、45年には現在料金の6割以上の値上げが必要としている。
今後、老朽化する水道管を更新しながらも、水道料金の値上げを最小限に抑えるための方策はあるのだろうか。水道事業のマネジメントを専門とする近畿大学経営学部の浦上拓也教授は「人口減少や節水技術の向上によって水需要が減少し、施設の稼働率も悪化している。持続可能な水道経営のためには、市町村の垣根を越えて事業を広域化し、過剰な施設の廃止や共同利用といったダウンサイジングを図ることが不可欠だ」と語る。