2024年12月22日(日)

人口減少社会とスポーツと子どもと

2023年9月30日

 東京都内に住む30代後半の男性は、小学6年と1年の息子がいる。専業主婦の妻と未就学児の長女の5人家族で、息子たちは少年野球チームに所属する。

(gyro/gettyimages)

 男性も小学生時代に野球をはじめ、中学からは硬式のシニアでプレーし、高校も私学に推薦で入学。目標だったプロの道には進めなかったが、大学でも草野球をやるなど、野球人生を楽しんできた。家族を養うようになった現在も良い思い出で、野球には感謝の念がある。

 「野球を一生懸命やっていたことで、忍耐力がつき、一つのことに集中して取り組む習慣がつきました。とてもいい影響があったと思っています。子どもにも勉強でも、スポーツでも何か一つにフォーカスして熱中できるものを見つけてくれたらいいなと思いました。野球なら自分も教えられるので、2人が楽しくやってくれているのは、本当にうれしいです」

 活動日は他の少年野球チームと同様、土日と祝日で試合があれば丸一日つぶれることも茶飯事だ。チームへの関わりとして「見守り隊」も順番で回ってくる。本当は「パパコーチ」もやりたかったが、仕事が土日に入ることもあって、やむなくあきらめたほどだ。

 しかし、男性は保護者がチーム運営における何らかの役割を担うことは「必然」だと考えており、父母会をなくせばいいという声や、保護者の労力負担のないチーム運営への転換には、きっぱりと否定的な意見を口にする。

 「少年野球は、保護者のサポートがないと成立しないんです。特殊な習い事だと思いますが、それぞれの家庭は、それを理解して入っています。同じような気持ちで入ってきてほしいですね」

 実際、男性の家族では、「パパコーチ」を引き受けることはできないが、妻はチームをサポートし、夏休みの合宿準備、出欠確認や参加費の集金、現地でも子どもたちが熱中症にならないように給水係も担う。

 さらに、合宿中は、ボランティアで参加してくれる指導陣のお酒も買いだしに出かける。男性も「コーチ陣のお酒くらい、自分たちで買いに行けって思いますけど、昔からの伝統みたいですね」と愚痴をこぼし、「共働きの家庭だと、父母会で役割を担うのは難しいかもしれないですね」と父母会の負担の大きさは認める。

 しかし、男性のチームで、実際に月1回の見守り隊をやらない保護者がいると話し、「そういうことには、正直に言うと、不満があります」と打ち明ける。家庭の事情はさまざまで、男性もそれは理解している。それでも、ある保護者は親の介護を理由に見守り隊に来ていないことにも「月に1回くらいの当番の日くらい、来れるんじゃないかって思ってしまいますよね」と厳しい視線を向ける。

 「子どもたちが野球をやりたいと思っているなら、親はそれに応えてあげようと思うものではないのでしょうか」


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