2024年12月2日(月)

Wedge REPORT

2023年4月21日

「生徒同士だとサーブだけで終わることが多かったのに、コーチが来てからラリーが続くようになった」「都大会に出場するという目標ができ、今は卓球が本当に楽しい」

岩崎コーチの指導を食い入るように見つめる日野市立平山中学校の卓球部員たち(WEDGE)

 3月中旬の土曜日、小誌記者が訪れた東京都日野市立平山中学校の体育館では、25人の卓球部員が汗を流していた。同部では卓球未経験者の顧問教員を補完する形で、2022年度から日野自動車卓球部の岩崎栄光コーチが週2回実技指導をしている。1年間専門的な指導を受けてきた冒頭の生徒の言葉には、成長の足跡が刻まれていた。

 日野市では23年度から、地域部活動の取り組み「ひのスポ」が本格的にスタートする。卓球は平山中を拠点に、希望すれば市内の中学生全員が参加できる形になる。阿部啓介校長は「生徒にとっては学校外に開いて活動できる貴重な機会。『ひのスポ』が生徒や地域のニーズに根差した取り組みになることを期待したい」と話す。

転換期にある部活動
なぜ地域移行が必要か

 日本のスポーツ・文化芸術振興の一翼を担ってきた「部活動」は今、転換期を迎えようとしている。

 文部科学省は、公立中学校の休日の部活動を段階的に地域団体や民間事業者などに委ねる「地域移行」を23年度から本格化させる。その仕組みづくりは各地域に委ねられ、文科省は22年度の補正予算と合わせ47億円の予算を確保し、地域移行を支援していく。

 地域移行を進める理由は大きく分けて二つある。一つが少子化の進展だ。生徒数の減少に伴い、部員が集まらない部活動が増え、大会への出場や練習がままならない学校も多い。

 もう一つは、教員の働き方改革だ。16年度の教員勤務実態調査によると、中学校教員の半数以上が月80時間以上の時間外労働をしており、中でも放課後や休日の指導を強いられる部活動の負担は大きい。教育研究家の妹尾昌俊氏は「AIやICTが発達した今、生徒の探究的な学びや協働的な学びを深めるための支援こそ教員に求められている。部活動に費やす時間をその準備に使うことができれば、公教育の質の向上にもつながる」と指摘する。

 地域移行は急務だが、〝改革の春〟の到来を控えた昨年末、文科省は実質的なトーンダウンを余儀なくされた。当初、今年度から3年間を地域移行の「改革集中期間」と掲げていたが、全国市長会などの団体から「3年での地域移行は現実的ではない」「人材に恵まれない地方や中山間地域の事情を考慮してほしい」などの批判の声が相次ぎ、目標期限を設けないスタンスを明確に示さざるを得なくなった。


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