2022年10月5日(水)

Wedge REPORT

2022年1月27日

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 「おおいぬシリウス、こいぬプロキオン。オリオン座はべテルギウスだよ」

 軽快なリズムに合わせて『冬の大三角』を形成する星座と星の名前を復唱する児童たち。2021年12月、小誌記者が訪ねた東京都江戸川区立第四葛西小学校4年1組の教室では理科の授業が行われていた。

 授業を担当し、「子どもの脳はリズムに反応しやすいので、オリジナルの覚え歌を授業に取り入れている」と語る中本健太郎教諭は4年生を受け持つ教諭の中で最も経験が長いが、このクラスの担任ではない。普段は別のクラスの学級担任をしつつ、担当教科である「理科」の授業のみ、自らが受け持つ学級以外の教室の教壇に立つ。同校では21年4月から、国の方針に先んじて新たに「教科担任制」の導入に取り組んでいる。

担任学級ではない生徒たちに冬の星座を教える中本教諭(江戸川区立第四葛西小学校) (WEDGE)

 新型コロナウイルス第3波が猛威を振るう21年1月、文部科学省は、22年4月より全国の公立小学校の高学年(5、6年)に対し、教科担任制を本格導入する方針を打ち出した。従来の小学校教育では担任自らが国語、算数、理科、社会など、複数教科を受け持つ「学級担任制」を基本としてきたが、22年4月以降、高学年に対してのみ、特定教科の授業を担当する教員が複数学級を指導し、児童の評価・評定まで行う「教科担任制」への転換を図る。

 その背景には、外国語やプログラミング教育が必修化されるなど、小学校で教えるべき教科が細分化される中においても担当教員による専門性の高い指導を行うとともに、複数教科を受け持つ教員の働き方改革、教科担任制が基本となっている中学校教育へと円滑に接続するといった狙いがある。

 教育現場は今、大きな転換期を迎えている。時代に即した制度改革のためには、国、自治体、学校がその目的を共有し、連携をし合う必要がある。だが取材を進める中で、「教科担任制」に対する〝それぞれの思惑〟が交錯する状況が浮かび上がってきた。

方針を地域に委ねたまま
定数確保を目指す文科省

 21年7月に発表された文科省報告では、教科担任制を優先的に導入すべき対象教科として「外国語」「理科」「算数」「体育」の4教科を挙げた。だが、「各地域・学校の実情に応じた取(り)組(み)を可能とすることに留意する」とし、各地域や学校が到達すべき目標や事柄などについては具体的に明示されていない。文科省初等中等教育局の村尾崇財務課長は、「一部教科の交換授業や専任教員の配置などについて先行して取り組んでいる地域もあるため、各都道府県のこれまでの取り組みを否定したくはない。まずは4月に向けて必要な教員定数の措置を行ったうえで、22年度の実施状況をみつつ、国としての統一的な方針が必要かどうかを判断したい」と述べるにとどまる。

「教科担任制」の導入率は、教科によってバラつきがある
(出所)文部科学省「小学校等における教科等の担任制の実施状況(2018年度計画)」を基にウェッジ作成
(注)赤字は文科省が導入対象としている学年および教科(外国語は20年度より高学年で必修化) 写真を拡大

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