インド人の平均寿命は68歳で日本人より17年も短い
インドを旅していると町角の電柱などに貼られた死亡広告をしばしば目にする。男性だと50代後半や60代が少なくないことに驚く。2022年の世銀報告ではインド人平均寿命は68歳。アレッピーの食堂で奥に旦那の遺影が飾ってあったので女将に聞くと数年間の心臓病の闘病を経て昨年62歳で亡くなったという。
世銀報告は平均寿命が短い原因として衛生環境、医療の遅れ、栄養失調(幼児・子供の)、糖尿病、幼児死亡率、感染症を指摘していた。インドはヒンズー教など宗教の影響でベジタリアン大国のはずなのに平均寿命がどうして短いのだろうか。
ヒンズー教徒の平均的食生活はセミ・ベジタリアンであるが
10月16日。ゴアのアルジュナ・ビーチのホステルのマネージャーは屈強なアラフォー男のヒンズー至上主義者。ヒンズー教は殺生を禁じているので食肉はタブーであるという。彼自身は穀物・野菜以外は蛋白源としてミルク、バター、チーズ、鶏卵を食べていると。肉類ではチキン・カレーなどチキンだけは食べるようだ。そして海が近いので魚も食すという。彼の話すようなセミ・ベジタリアン生活であれば健康的ではないか。
ところが、セミ・ベジタリアンを実践してみるとかなりイメージが異なる。例えば、食堂におけるインド料理の定番はターリ(ベジタリアン定食)である。ターリはチャパティ(小麦粉を溶いて鉄板で焼いたもの)、ライス、野菜カレー数種類、ヨーグルト少々が供される。どこの地方でもどの店でも野菜カレーの中味以外は同じ内容である。フツウはヨーグルト以外お代わり自由である。問題はチャパティとライスの量である。チャパティ3枚と大盛りライスは日本人なら半分以上は残す分量である。他方で野菜カレーはいずれも野菜が極端に少ない。おそらく微塵切りにして煮込むのでカレーに溶け込んでいるのかもしれないが。
“炒め物3兄弟”は塩分過多の油地獄

ターリ以外でどこの食堂でも必ずメニューにあるのがフライド・ライス(チャーハンみたいなもの)、チョウメン(中華料理の炒麺「チャオミエン」が語源らしいが完璧にインドナイズされた代物)、フライド・ヌードル(麺が細いうどん)の炒め物である。いずれもキャベツ、人参、玉葱のみじん切りをほんの少々フライパンに入れ次に使い古した油を大量に投入して炒めて塩をぶちまける。
注文すると卵も入れてくれる。そして麺、ライス又はうどんを投入したあとで何種類ものスパイスを振りまく。塩分過多、スパイス過多であり分量も日本人の感覚では二人前くらいある。過分な油でぐちゃぐちゃに炒めるので食感が極端に悪いので毎回半分近く残した。インド人の客は何事もないように完食していたが。
“炒め物3兄弟”は穀物と食用油脂と塩分とスパイスの過剰摂取のお手本のような庶民的日常料理である。
動物性蛋白質の供給地域は限定的かつ不衛生!?
インド全域で最もフツウに提供される動物性蛋白質はチキンと鶏卵である。ただし、北インドのラダック州やインドの田舎の寒村に行くとチキンすら食べられないことがフツウである。チキンの次がマトン(山羊が大半で稀に羊もある)であるがマトン肉は提供される地域が限られており値段もチキンより三~四割は割高である。
また海辺の地域の食堂では魚介類もメニューにあるが驚くほど高い。従ってチキン、マトン、魚の入った料理はターリ(ベジタリアン定食)の二倍~四倍もする。下層階級には高嶺の花である。
インドでは鶏も山羊も放し飼いされているのが一般的であり、飼料を与えられてないのでゴミや残飯を漁っており、トイレの傍の泥水を飲んでいたりしてどうにも非衛生的なイメージが焼き付いて食欲が湧かない。
インドのノン・ベジタリアン(肉魚)料理は食欲が湧かないシロモノ!?
ヒンズー教は殺生を禁じているしヒンズー教から派生した仏教、ジャイナ教、シーク教も同様である。またイスラム教では豚肉はタブーである。その結果としてインドでは肉食はあまり好ましくない日陰の存在のように思えるのは筆者の考えすぎだろうか。
肉料理や魚介類の調理方法や味付けにも問題があり日本の平均的老人には敢えて割高な料金を払ってまで食べたいと思わないような代物だ。インドでは肉も魚も超ウェルダンで調理するのが大原則だ。怪しげな油でカラカラに揚げるか強火で焦げるまで焼く。そして塩分を放り込みインド的スパイスをごちゃまぜする。カレー料理(煮物)の場合もとことん肉または魚介を煮込んであり味付けは基本的に塩分過多だ。頻繁に食していると血圧や循環器系に悪影響を及ぼすのではないかと小心な老人は心配になる。
なお上述した料理はあくまで庶民相手の食堂での放浪ジジイの見聞である。外国人観光客やインド人富裕層御用達の高級ホテル、高級レストランに行けば別世界であろう。