コロナ禍から社会が徐々に回復し、国内・国外の人流が回復するにつれて、国内各地の観光地が活況を呈している。日本人の国内旅行の回復もさることながら、訪日外国人客によるいわゆるインバウンドもコロナ禍前最高水準3188万人(2019年)を24年時点3687万人と上回って回復している。25年も既に10月の時点で3555万人となっており、これまでの記録を更新しそうな勢いである(日本政府観光局「訪日外客数(2025年10月推計値)」)。
京都は日本人にとっても修学旅行先としてなじみ深い場所であるし、訪日外国人客にとっても、寺社仏閣をはじめとして、日本庭園、歴史ある木造建築、舞妓さんなど日本の文化を体験できる観光地として人気を博している。
24年1~12月の都道府県別の外国人延べ宿泊者数では、京都府1カ所で169万6000泊であったのに対し、東北地方6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)の合計をもってしても、102万9000泊で、京都府には及ばない。東北地方に住む筆者にとっても、京都の〝吸引力〟を強く感じている。
京都の観光地としてのブランド力(の自信)に圧倒させられるフレーズとしては、京都市の京都創生PRポスターの「日本に、京都があってよかった。」である。
これは「京都が日本の財産,世界の宝であることをアピールする」というメッセージをこめて京都市が作成した広報ポスターに掲げられているフレーズである。冒頭にも述べたとおり、京都の存在で訪日外国人旅行客の国際的な誘致が加速されているのであれば、京都のブランド力に「よかった」といえる面もあろう。
その一方で、全国・全世界の様々なところから京都に観光客が押し寄せている現状は「オーバーツーリズム」と称される混雑現象まで引き起こしている。実際、京都市内では公共交通である京都市バスの満員乗車が続き、観光シーズンには一般の京都市民が乗車することができず、日常の生活に支障が生じている。
これも東北地方と比較して言うならば、東北地方の観光地をめぐるローカル線などの公共交通は「利用者が少ない」ために、課題を抱えているが、京都市の公共交通は「利用者が多すぎる」ために課題に直面しているといえる。
