2025年12月14日(日)

食の「危険」情報の真実

2025年9月4日

 除草剤「ラウンドアップ」への誹謗中傷をSNSなどで行った複数の投稿者を相手取り、同製品を製造・販売する日産化学(東京)が東京地方裁判所へ起こしていた損害賠償請求訴訟で、同地裁は「企業への名誉・信用棄損にあたる」として賠償金の支払いを命じる判決を下した。市場で流通する一製品に対する匿名の誹謗中傷に対して、司法が「不法行為に基づく損害賠償請求」を認めたことは極めて珍しい。この判決が今後、安易な虚偽情報の発信にどこまで抑止力を示すか注目される。

(valio84sl/gettyimages)

「農家を守るため」の訴訟

 除草剤のラウンドアップ(有効成分名グリホサート)は、1974年に米国の旧モンサント社(現在はドイツのバイエル社)が開発した除草剤。日本では80年に農薬として登録された。2002年から、日本での販売権を譲り受けた日産化学が販売し始め、農業用のほか、ホームセンターなどで「ラウンドアップ®マックスロードシリーズ」として売られている。

 15年、「国際がん研究機関」(IARC)がグリホサートを発がん性分類で「グループ2A」(おそらく発がん性あり)」(筆者注・この分類はリスクの強さの分類ではなく、証拠の強さまたは危害を生む可能性の分類)に分類したことから、米国で訴訟が起き、SNSでラウンドアップに対する根拠のない情報があふれるようになった。日本の内閣府食品安全委員会をはじめ、欧米の公的評価機関は「発がん性はない」との見解を示したにもかかわらず、「がんを起こす」「自閉症の原因だ」「ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤と同じ」といった誹謗中傷が絶えなかった。

 こうした根拠なき記事に対し、日産化学は訂正を求める活動を行い、それなりに成果を収めてきたが、誰でも投稿できるSNSの世界では警告や削除要請では効果は上がらなかった。

 このため、3月下旬、再三の警告にもかかわらず、削除に応じなかった複数の投稿者を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。


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