2025年12月14日(日)

食の「危険」情報の真実

2025年9月4日

 訴訟の根拠は、民法709条に基づく「不法行為による損害賠償請求」。ある企業の商品が危険でもないのに、極めて危険な薬剤であるかのように拡散・喧伝されることによって、その会社の信用と商品が大きく毀損されたというのが訴訟の理由だ。

 訴訟の背景には、ラウンドアップを使う農業生産者から「農家がデマと戦っているのにメーカーはなかなか動いてくれない。ユーザーのことをもっと考えてほしい。断固たる措置を期待したい」といった声が多くあったことも挙げられる。こうした声を受け、「農家を守るためにもメーカーが前面に出て毅然と対応しなければいけない」と訴訟を決意したという。

被告は謝罪・反省

 被告投稿者は複数で50代~70代の一般人。激論が交わされるのではと予想したが、被告が裁判所に出頭して意見を言うことは一度もなく、反論することもなかった。多くは「良く確かめず、軽率だった」と反省・謝罪し、和解を申し出た。

 一方、反論はしなかったものの、和解金が高いことに納得しなかった投稿者は最後まで争った。しかし、7月半ばに東京地裁は「科学的根拠に基づかない虚偽情報を発信し、企業と製品の信用・名誉を毀損した」として賠償金の支払いを命じる判決を下した。

日産化学農業化学品事業部ラウンドアップ営業部が運営するSNSでも、判決を伝えている

 被告は控訴せずに賠償金を支払い、判決が確定したことを8月27日、日産化学はホームページで公表した。

論点を3つにしぼる

 日産化学が勝訴した理由は、誰が見ても明らかに間違っている主に3つの虚偽事実にしぼって争ったことが挙げられる。その3つは「ラウンドアップは世界中で発売禁止になっている」「ベトナム戦争で使用された枯葉剤と同じだ」「ラウンドアップによって日本の国土が汚染されている」だ。

 正しく言えば、ラウンドアップはベトナム戦争で使われた枯葉剤とは全く別物で、今も世界約150カ国で使われている。さらにラウンドアップは土壌で速やかに分解されるため、国土が汚染されているという事実はない。


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