2026年6月23日(火)

Wedge REPORT

2026年6月23日

 2025年12月上旬、首都圏某所――。

 小誌記者は冬の冷たい風が吹きつけるマンションの屋上にいた。5G(第5世代移動通信システム)の基地局新設工事の現場を取材するためだ。

私たちの生活に欠かせない〝インフラ〟になったスマホが直面している危機とは?(D3SIGN/GETTYIMAGES)

 現場では作業員5人と足場工2人の7人で作業にあたっており、工事は2日程度で完了するという。

 一見すると街中で見かける普通の工事だが、様々な苦労の上に成り立っている。電気通信工事に10年以上携わるというベテラン作業員は、基地局工事にまつわるエピソードを教えてくれた。

 「壁面に約3メートルの支持柱を設置し、重さ約200キロの設備を取り付けるが、壁面の内部には図面に載っていない鉄筋や配管がある。ウォール・スキャナーを当てて確認しながら、支持柱の取り付け位置を慎重に定めている。

 『置局(ちきょく)』と呼ばれる基地局の設置場所確保も我々の仕事で、移動通信事業者から希望エリアを聞き、条件に合う物件を探して交渉を行う。良い物件を見つけても、オーナーが設計に必要な構造計算書を紛失していたり、賃料交渉がまとまらず断られることも多い。そうすると物件探しからやり直しになる」

 それだけではない。

 「工事前には、近隣住民への説明も必須だが、事前にご自宅などへ説明に伺っても門前払いされたり、事前にご了承いただいてもいざ工事が始まると『うるさい』『あと何時間で終わるんだ』とご意見をいただくこともある」

 通常時の業務に加え、災害が起これば、復旧作業のために現地にすぐさま駆け付けなければならない。この作業員は、19年10月の千葉での豪雨災害や24年1月に発生した能登半島地震の対応にもあたったという。

 「能登の時は1月2日に駆け付け、発電機を持って復旧を行ったが、被災者の方々から『電話がつながるだけで安心』という声を聞いた時、通信は社会インフラになったんだな、と改めて感じた。その時はうれしかった」と話す。

 一方で、現場の人手不足は深刻さを増している。

 「現在は設備が小型化し、既設基地局に5G設備を追加する工事も増えている。長くても2、3日で終わる工事が大半のため、県外に出張してでも、件数をこなさなければ収入が安定しない。

 工事日が確定してから作業員を集めようとしても工事納期に間に合わない。せっかく育成した若手も、工期が長く安定収入が見込める電気設備工事へ移ってしまうこともある。惜しい気持ちもあるが、それぞれの人生があるから引きとめない。人材確保は本当に難しくなっている」

見上げると、ビルやマンション屋上には通信基地局が数多く設置されている。(WEDGE)

 在留資格「特定技能1号」を持つ外国人の受け入れも始まっている。

 通信インフラの建設や保守を担う通信建設会社で構成される情報通信エンジニアリング協会では、21年度からベトナムやインドネシアなどで電気通信分野の理解促進に向けた講習会を実施してきた。25年度からはベトナムで、日本で就労希望の学生や社会人を対象に、技能や日本語などを学ぶ教育訓練事業を開始し、受け入れ企業での就労につなげる取り組みを進めている。26年度は受け入れ企業と対象者を拡大し、持続可能な体制の構築を目指している。

 一方で、同協会専務理事の海老根崇氏は、「複雑な思いもある」としながらも、こう続けた。

 「特定技能評価試験に合格した外国人は、日本人と同等の賃金水準で採用している。正直に言えば、日本人採用よりコストはかかる。日本人を採用できるのが理想だが、人材確保の可能性を広げるための取り組みの一つとして進めている」


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