2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2022年1月27日

 教科担任制の本格導入に向けた教員定数の確保についても暗中模索の状況が続く。文科省は、4年間(22~26年度)で8800人(初年度である22年度は2000人)の予算措置(教員定数の増)を要求するも、財務省は中学校教員が小学校でも教えるなどの工夫を求め、予算交渉は難航。ようやく昨年末の12月22日、4年間で3800人程度増やす計画で折り合った。だが、全国に公立小学校が約1万9000校もある中で、22年度の定数措置分である950人は焼け石に水といえる。

 財務相の諮問機関で文科予算も審議する財政制度等審議会の歳出改革部会長代理を務める慶應義塾大学の土居丈朗教授は「少子化の加速とともに〝教員余り〟が予想される昨今、将来の教員定数確保は、教育方針の違いで『同床異夢』の状態に陥りがちな国と都道府県の間での数少ない共通利益となっている。だが、肝心の教育改革の中身が定まらないまま、数ありきで進んでしまっては本末転倒で、本来目的とすべき子どもたちの学びの質向上には至らない可能性がある」と危惧する。

 22年度まで残り数カ月を切る中で、文科省や都道府県から次年度に向けた統一的な方針が示されない学校現場では「教科担任制の本格導入」に対する温度差や認識のずれが生じている。

 すでに地域独自の形で導入している公立小学校の教員らは「わが県では昔から理科と社会の交換授業が普及しており、特段新たに対応する動きはない」(兵庫県)、「文科省が対象とする4教科全てとはいえないが、現状、一部の教科について専門の教員が配置されている。今後、教員の増加があればその他の教科にも拡大していくものと思っている」(北海道)と述べ、国の本格導入の意向を踏まえながらも現状維持にとどまる見込みだ。

 また、いまだ教科担任制を導入する目途が立たない都内公立小学校のある教員は「時間割を新たに組み直したり、苦手な教科の担当に指名される可能性があったりするなど、現場の余計な負担が増える印象がある。今の仕組みを変えろというのであれば、教員の数を増やすことが先決だ」と不満を漏らす。

 学校現場の人材育成に詳しい明海大学の釼持勉客員教授は「ただ教員の数を増やしても、教科担任制の青写真を描けていない学校ではうまく活用できないだろう。まずは現状を前提としたうえで、各学校の状況に応じて、教科担任制のメリットを最大限生かすことができる学級・学年経営へと転換を図るべきだ」と指摘する。

 では、教科担任制には具体的にどのようなメリットがあるのだろうか。冒頭の第四葛西小学校では現在、試行的に3年生から教科担任制の導入を進めているが、以前と比べて教員の数が増えたわけではない。各教員が学級担任と教科担任を兼務しながら運営している。


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