2025年4月15日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月10日

 2025年3月16日付 フィナンシャル・タイムズ 紙は「アジアの米国同盟国も防衛政策を再検討する必要がある」との社説を掲げ、日韓は安全保障面での対米依存を変えるため防衛費を増額し両国間の協力を強化することが必要だと指摘している。

(Josiah S/gettyimages・ZUMA Press/アフロ)

 トランプ大統領は米国を頼りないパートナーにし、北大西洋条約機構(NATO)加盟国では防衛政策の劇的な再検討が始まっている。アジア太平洋の米国同盟国への影響も同様に深刻だ。

 ロシアよりずっと強力で権威主義的で攻撃的な中国の台頭は、自国の安全を米国に長く頼ってきた同地域の民主主義国にとって一層深刻な挑戦をもたらしている。特に日本と韓国にとり深刻だ。米国との同盟は1950 年代以降、安全保障の中心的柱で、日本には6万人、韓国には3万人近くの米軍が駐留している。

 表面的には米国との紐帯は強力だ。先月の日米首脳会談を受け石破茂首相は日米関係を「新たな黄金時代」とさえ言っている。

 トランプ政権内の対中強硬派は、米国が太平洋地域に軸足を移す中、大統領がアジア同盟国の価値を理解することを期待している。日本の当局者は石破首相訪米時の共同声明が、中国が力と威嚇で東シナ海の現状変更を試みることに警告を発し台湾海峡安定の重要性を強調したことを再保証と捉えているが、トランプの対台湾関与を疑わせる相当の理由もある。

 大統領は台湾を米国の半導体産業から「盗んだ」と非難しており、台湾のために米国人の血や資源を使う用意を全く示していないが、中国が台湾を併合すれば、アジアでの米国支配は終焉し中国が日韓経済に死活的なシーレーンを睥睨(へいげい)することを許すことになる。

 日韓両国の一部は米国支配から距離を置くことを歓迎するかもしれないが、これらの誇り高き民主主義諸国が攻撃的中国の傘下に入るのを防ぐには防衛費増額が必要だ。これは米国によるタダ乗り批判緩和にも繋がる。

 日本は劇的に防衛費を増やしたが、それでも2027年までに国内総生産(GDP)の2%を目指しているに過ぎない。核武装した北朝鮮に脅されているのに韓国の防衛費はGDPの2.8%に留まる。

 効率性を高め対米依存を減らすには、日韓両国は他の民主主義国と一層緊密に協働すべきだ。日本が英伊両国と戦闘機の共同開発合意を結んだのは良い一歩だ。

 地域のパートナーと新たな同盟関係を構築するのも良いだろう。石破首相はアジア版NATOを唱えているが、優先すべきは日韓関係強化だ。両国関係は刺々しく安全保障協力実現のために過去の米国大統領は両国を宥めすかす必要があった。


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