2025年4月9日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年4月2日

 昨年以来、中国の対日姿勢は軟化している。その動機は、中国が西側諸国に極度に敵対的な姿勢を示すかつての戦狼外交が国際的な嫌悪感をまねいたこと、自国経済の不調、同盟国に冷淡なトランプ政権の成立にともなう西側陣営の切り崩しといった事情が考えられるだろう。

中国が沖縄へ工作を強めている中、玉城デニー知事にはどのような影響があるのか(つのだよしお/アフロ)

 一方、なぜか中国が異常に「攻め」に出ているのが、沖縄に対する各種の工作だ。昨年末、筆者は『週刊現代』(講談社)誌上で、沖縄県の玉城デニー県知事や中国共産党の統一戦線工作部につながる在沖縄中国人ら、さまざまな人に話を聞いてその実態を報じた。

 今回は、Q&A方式で現状を説明していくことにしよう。

繰り返される中国要人の訪沖

──最近、中国が沖縄に盛んにアプローチしているという話をよく聞きます。具体的には何が起きているのでしょうか?

 2023年6月ごろから、中国の沖縄に対する関与が急激に活発化しています。たとえば、SNSや動画サイトでは「琉球独立」や「沖縄は日本に迫害されている」といった主張を含むコンテンツが急増。日本経済新聞(24年10月3日付)の調査では、約200件の工作アカウントが沖縄独立を煽る動画を転載していることも判明しました。

 中国の外交官や要人の訪沖も明らかに増えています。23年10月には呉江浩駐日大使、24年7月には福建省のトップ(省委書記)の周祖翼氏まで沖縄を訪れました。

 以前は、中国の外交関係者が沖縄を訪れること自体が珍しかったのですが、24年4月に駐福岡総領事に就任した楊慶東氏が年間に3〜4回訪沖しているなど、頻度が上がっています(なお、コロナ前までの歴代総領事は年1回程度)。また、沖縄県の副知事が上京して中国大使館を訪問する、前出の福建省の例のように「省委書記」クラスの訪沖がなされるなど、「史上初」かそれに近い人的交流も増えています。

──この流れは、いつ頃から始まったのでしょうか?

 大きな転機が、23年6月1日に習近平が中国国家版本館(古書を保管する国立施設)を視察した際に行った「福建省福州市には琉球館、琉球墓があり、琉球との交流の根源が深いと知った」という発言です。過去に彼が福建省で勤務していた際、琉球(沖縄)と中国の交流について詳しくなった、というわけですね。

 この発言自体は「ただそれだけ」の話です。しかし、現在の習近平体制のもとでは、最高指導者たる彼の発言は、別の意味を持ちます。

 「彼がどうやら〇〇(この場合は沖縄)に関心があるようだ」となれば、その意志を過剰に忖度した官僚たちや各部門が出世主義的な動機からこぞって動き出すことになります。もちろん、習近平本人としてもそうした結果を予測しているから口にしているのかもしれませんが。


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