2025年4月13日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年4月7日

 米国のトランプ大統領が「相互関税」と呼ぶ新たな関税措置の発表し、「日本には24%の追加関税をかける」と述べた。そして、「日本は米国産のコメに700%の関税をかけている」と、先日のレビット大統領報道官による主張を繰り返した。

トランプ大統領による「相互関税」は日本農業にどのような影響を与えるのか(AP/アフロ)

 一方、日本政府は食料・農業・農村基本法に基づく「新たな基本計画」(5カ年計画)を閣議決定し、コメの輸出を2030年に、24年比約8倍の35万トン(米粉、パックご飯を含む)とする目標を掲げた。メデイア各紙は、「輸出向けに生産を拡大し国内で不足した場合は、国内に振り向けることで24年に店頭で見られたような極端な品薄の再発防止にもつなげられる」と解説している。

 トランプ大統領が主張する「コメ関税700%」はもちろん、正しい指摘ではない。しかし、日本が米国の仕掛ける関税やそれに伴う「ディール」と戦わなければならないのは事実だ。

 コメの輸出を拡大するためにも、関税や国際価格と渡り合う必要がある。「危機をチャンスに」、日本の農政が思い切った変更・転換をする時が来ているのかもしれない。

日本のコメの関税は国際約束 

 大統領や報道官が引用している「700%」なる数字は、「例外なき関税化」を旗印とし、日本のコメ輸入解禁も話し合われたガット(関税貿易一般協定)の多国間交渉ウルグアイ・ラウンド(UR)の歴史・経過を無視した発言であり、正しいものではない。

 交渉の経緯を振り返ると、最終段階でクリントン政権へ移行したアメリカは、例外なき関税化よりも、日本のコメについては関税化の例外(特例措置)を認めたうえで、日本が一定量を関税ゼロで義務的に受け入れるミニマム・アクセス(MA)の加重(最終的に日本の国内消費量の8%)を設けた方が、実質が獲得でき都合が良いと判断していた。その過程で計算された内外価格差を換算すると700%台にはなるが、それついても最終的には反対がなかった。

 その後、コメは関税化され、MAは年間77万トンにとどめられ、その枠外でも1キログラム(kg)当たり341円の関税をかけて民間が自由に輸入できる仕組みとなっている。何ら国際約束違反はない。

 現在のコメの国際価格は上昇しており、内外価格差も変化しているため、「700%の関税」とはなっていない。筆者が現在価格で仮換算しても、おそらく200%台になるのではないか。


新着記事

»もっと見る