2025年4月17日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年4月7日

相互関税の今後

 「Tariff Man(タリフ・マン)」を自称するトランプ大統領が主張する“相互関税”の行方は以下の4つの予想ができる。

① 日本からのコメ輸入に米国も同水準の課税を主張する。追加関税でいう24%が考えられるが、これは日本から米国へのコメ輸出を考えると、大きな障害となる。

② アメリカ国内での輸入コメ価格上昇を防ぐため、日本米の価格引き下げやドル高を維持する政策誘導を要求する。

③ アメリカ米の対日輸出を増やすため、大幅な関税引き下げを要求し、枠外での「民間貿易量」の拡大について2国間での交渉を求める。

④ MA米の中で、目下は5割程度と推測されるアメリカ産米の割合増加を求める。

 これらの可能性は、結局のところ、脅しをベースとした譲歩の要求だから、不安定なものであるし、日本米の輸出戦略にも支障を来しかねない。「コメ以外の分野での譲歩交渉」に飛び火することも大いに考えられる。

 つまり、ディールを最重視するトランプ政権の行動を見ていると、関税率にとどまらず、また、個別品目のコメにとどまらず、アメリカ農産物の輸出拡大に関税政策を利用する方向が明らかである。コメの関税政策部分だけでの論争でよいのか、日本はどのような方向をたどればよいのか、広い観点で検討すべき時期に来ていると考える。

 アメリカのコメの関税率が約6%という状況の中、相互関税が実行されれば、「新基本計画」における輸出重点農産物・食品であるコメの輸出振興に大きな障害が生じることは明らかだ。

日本がまず、改善すべきこと

 日本は、新基本法・基本計画の下で、食料安全保障、農地と農村地域の健全な維持発展を図ろうとしている。そのためにも、環境整備をしなければならないことがある。

 それは、国際貿易という場で価格は国際競争に委ね、コメの生産と経営が持続できるよう所得は「直接支払い」へ切り替えることだ。国際規律で許され、かつ、欧米の各国が採用している政策手法を実現することである。

 そのように方向を転換すれば、「相互関税」の脅しもかなりの程度は薄れる。アメリカは、「自国に有利なMA米の確保」は既得権と押さえた上で、実質的に得をとる「+α作戦」へと交渉のバリエーションを考えるかもしれない。

 つまり、「MA米は確保+枠外関税の引き下げ」交渉やほかの農産物の対日輸出の拡大を求めてくる可能性もある。何はともあれ、「コメの関税が極めて高く貿易障壁になっている」という一般受けする理由を前面に出して、日本側からの譲歩を獲得しようという作戦を考えているのだから、そこを是正するのも交渉における一つの作戦になるのだろう。


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