2025年4月17日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年4月7日

 日本側の事情を見れば、2024年のコメ輸出(パックご飯、米粉を含む)4万6000トン(t)のうち、対米輸出は9000t弱で、1~2位の地位を占める。そこでのアメリカの関税引上げは致命傷だ。   

 粘り強い「拒否的交渉姿勢」で対応するか、「価格は国際競争・所得は直接支払いで経営を持続」とする「背水の陣」で臨むのか、あるいは、「ほかの農産物貿易分野で代償的な譲歩をする」つまり〝じり貧〟に追い込まれてしまうか。大きな岐路に立たされている。

課題の多いコスト削減

 日本が掲げた意欲的目標の達成は、「輸出専門産地の集約・育成などを通じて国際競争に耐えうるコストの節減・生産性の向上を図る」とは言っても、そう簡単ではない。UR農業対策でも農地中間管理政策でも大幅なコスト削減を数値入りで打ち出したが、実現しているとは言えない。

日本のコメの効率化とコスト削減はいまだ道半ばだ( PixHound/gettyimages)

 コメ主産地の新潟あたりでも新市場開拓の助成金を加味した上でなお9000円/60kgぐらいが現実的な輸出価格の目標であり、国際価格にはほど遠い。また、基本計画の「2030年35万t(玄米換算で約40万t)」という輸出目標を金額で割り戻すと、1万2000~1万3000円/60kgと推測され、国際価格の2倍以上にとどまる。

 「700%関税」は大間違いの数値ではあるが、こんな数字をかざし譲歩を迫るアメリカのディールは、ある意味、巧みなものである。

 付け加えると、農産物・食品の投資の分野では、日本のコメ輸出には、米粉、パックごはんが含まれるが、これらの加工業者は、アメリカで工場の設置などに投資している。日本からのコメ輸出が高率の「相互関税」で制限されれば、原料米の現地調達になって、輸出の「拡大」には大きな障害となろう。

 この際は、アメリカから「コメ関税700%」とか「相互関税24%」などと吹っ掛けられたのを奇禍として、日本からの農林水産物・食品輸出の環境整備を抜本的に強化する、それにより「食料安全保障」の前進を図ってはどうだろうか。 

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