
抗がん剤治療を始めたとき、私はゼロックス(XELOX)療法とアバスチン(Bevacizumab)の組み合わせによる治療に臨み、初めての点滴を受けた。点滴は3時間かかり、その間は正直おっかなびっくりであった。一般保険診療であるから安心していたが、思ったより初めは副作用が出なかったため、僕はどこか気を抜いていた。治療は特別なものではないと感じ、少し舐めてかかっていた。
「プラチナ製剤」
ゼロックス療法は、オキサリプラチンとアバスチンを組み合わせた治療法である。オキサリプラチンはDNAの複製を妨げ、がん細胞の増殖を抑制する効果がある。オキサリプラチンは、がん細胞の増殖を抑える抗がん剤で「プラチナ製剤」とも呼ばれるが、言わば超レアメタルのプラチナ化合物だからレアメタルキングの僕としては、2005年に日本で新規に合成された抗がん剤として誇りを感じる次第だ。
ウィキペディアによれば、オキサリプラチンの副作用は以下の通りだ。
- 末梢神経症状のために手や足がピリピリとしびれる、手や足がジンジンと痛む、手や足の感覚がなくなり手や足に力がはいらない(確かに、自宅に帰ってからは手袋が必需品となった)。
その他にも個人差はあるものの色々出てくる
- 消化器症状
- 吐き気、食欲不振、下痢などがあらわれる。
- 皮膚症状
- 脱毛、発疹、色素沈着などがあらわれる。
- 聴力障害、耳鳴り(高音域の)聴力低下、難聴、耳鳴りなどがあらわれる場合がある
- 骨髄抑制
- 白血球減少、好中球減少、血小板減少などがあらわれる場合がある。
- 突然の高熱、寒気、喉の痛み、手足に点状出血、あおあざができやすい。
- 急性腎障害
- 尿量が少なくなる、ほとんど尿が出ない、一時的に尿量が多くなる、むくみなどがみられる。
一方、カペシタビン(ゼローダ)は経口で摂取できる抗がん剤で、体内でフルオロウラシルに変換され、がん細胞を攻撃する。アバスチンは血管新生を抑制し、腫瘍の血液供給を減少させることでがん細胞の成長を抑える役割を果たす。
治療が進むにつれて、僕はいくつかの副作用に直面した。最初の頃は大きな問題は感じていなかったが、治療が進むにつれ、吐き気や嘔吐が徐々に現れるようになった。特にカペシタビンやオキサリプラチンは吐き気を引き起こすことがあるので、抗吐剤を使用する必要が出てきた。始めは小さな吐き気程度だったが、次第にその頻度が増してきた。
また、下痢も一般的な副作用として現れた。カペシタビンは消化管に影響を与えるため、下痢が生じることがある。この症状が続く場合、脱水症状を避けるために水分補給をしっかりと行うことが重要だと感じた。最初は大したことではないと思っていたが、下痢の影響は予想以上に身体に負担をかけていた。
さらに、便秘と下痢が交互に起こることもあった。特に治療中に体がストレスを受けると、腸の動きが乱れる。便秘が続くと、体調が悪化し、精神的にもイライラすることが多くなった。僕は食事内容を見直し、野菜を多めに摂るよう心がけたが、それでも便秘は辛いものだった。
普段はあまり便秘に悩まされることはないが、3日間も便秘が続くと気持ちが悪くなり、どうしようもなくなる。肛門近くに詰まっているコロコロの硬い便が出てくれないのだ。まるでウサギのうんちの様なコロコロ便を出す為にトイレに閉じこもって半日も頑張るが「ウンともスンとも」反応しない。
排便を促すマグミット錠(マグネシウムもレアメタルである)を飲んでみたが、効かないので新薬のアミティーザを追加することにした。すると、今度は効きすぎてしまった。
健康な人にはわからないかもしれないが、薬の量を調整しないと大変な下痢になってしまう。このコントロールがうまくいくと、軟便が出たときには爽快感を感じる。
しかし、実際には真昼の決闘という言葉が頭を過ぎる。映画『真昼の決闘』の男優、ゲーリー・クーパーの名を借りて、私の苦しみを表現したつもりだが、周りには理解されない昭和の老人の下品なネタである。
次に、倦怠感が強くなった。抗がん剤治療に伴う倦怠感は多くの患者に見られるが、体力が落ちていることを実感するのは辛い。自分としては受け入れがたい気持ちがあった。まだ過信している部分があり、この疲労感を薬の副作用とは思えなかった。無理をせず休息を十分にとることが勧められているが、何日か経てば治るだろうと楽観視していた。
治療後の約1週間から2週間は、副作用が特に出やすい時期である。白血球の減少や消化管の問題が続く可能性があるため、その点には注意を払う必要がある。新たな症状や悪化が見られた場合は、すぐに医療チームに相談するべきなのだが始めは何を相談すれば良いのか分からないという不安もあった。