2025年3月31日(月)

Wedge REPORT

2025年3月27日

 東京電力福島第一原発事故から14年が経過した。福島県内の中間貯蔵施設に運ばれた除染土は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法に中間貯蔵開始から30年以内、すなわち2045年までに福島県外最終処分を完了させることが国の責務と明記される。

中間貯蔵施設に運ばれるために集められた処理土(環境省 中間貯蔵施設情報サイト「10分でわかる中間貯蔵」より)

 一方で、住民の安全と安心を一刻も早く確保するため早急かつ大規模に集められた除染土の汚染レベルには大きなグラデーションがある。半減期による減衰もあり、今やその約7割近くが放射線被曝リスクの観点からは一般土壌と大差無い状況となっている。 

 これら全てを一律に「放射性廃棄物」扱いで最終処分しようとした場合、莫大な予算と敷地が「福島県外で」求められる。それらのコストは全て、東京電力圏内を中心とした電力料金や、我々一人ひとりの税金によって間接的に賄われる。

 そのため、貯蔵された除染土全てを汚染レベルによって分別し(既に貯蔵時にそのように分別保管されている)、リスクが一般土壌並みのものについてはフレコンバッグを解体して不純物の除去および安全処理を施す(本稿ではこの土を「処理土」と呼ぶ)。

 その上で、まとまった土壌は本来的には土木事業などに有益な使い途がある資材となるため再生利用する。誤解も多いが、貯蔵したフレコンバッグをそのまま持ち出し転用するわけではない。

 再生利用の際には他の土をかぶせる覆土(ふくど)による処置も行う。これによって最終処分に向けた大幅な減容化に繋がる上、有益な資材を大量確保することにも繋がる。

 つまり、除染土壌問題とは「福島の問題」ではない。再生利用計画も、前述の法執行に伴う福島県外での敷地や金銭的負担軽減による恩恵を見込むものだ。

 ところが、見通しは明るくない。昨年2024年4月18日のNHKでは、「“除染土”県外最終処分『知らない』など福島県外の約75%』」と報じられ、今年25年3月に読売新聞が実施した調査によれば、全国46都道府県の知事のうち、最終処分場の受け入れを「条件次第で検討する」と回答したのはわずか5県にとどまった。

 今年は中間貯蔵開始から10年経ち、既に最終処分完了期限まで3分の1もの時間が失われたにもかかわらず、ほぼ手つかずの状況と言える。

 処理土が安全である以上、筆者個人の見解だけを述べれば、県外に限らず福島県内でも処理土を有効活用していくべきだとは考える。一方で、「安全と言うなら全て福島だけに押し付けておけばよい」となれば、処理土への理解や福島の復興はどこか他人事にもなり得る。首都圏に送る電力インフラとして作られた発電所事故対応にもかかわらず、福島はさらなる負担を一方的に支払わされる構図になる。

 震災後に示された「絆」に、福島に暮らす我々は大きく助けられてきた。どうかもう一度、関心をもって頂きたい。


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