東洋水産がXで公開したショートアニメCMが議論を巻き起こしている。若い女性が自宅で「赤いきつね」(インスタントうどん)を味わうシーンに、一部から「性的である」「不快」との意見が寄せられた。
女性は露出度の高い服装をしているわけではないが、頬の赤らみや口元のアップ、髪を耳元に上げる仕草といった演出表現が不適切だという。広告コンサルの中村ホールデン梨華氏は、(1)非現実的な女性表象、(2)男性版との頬の赤さの違い、(3)つまり男性視線の広告が根底にあると指摘する。
立命館大学院先端総合学術研究科の戸谷洋志准教授は、「女性を性的に描くことを自明とする社会において、女性は公共空間において性的な言動を差し向けられ、その脅威を回避するために、そこから排除される。そこには明らかな差別がある」
「『僕はあれは全然性的だと思わなかった』と主張する人は、公共空間において性的な言動の脅威に苦しむ人の生き辛さを1%でも想像する努力をするべきだと思う。想像できないなら、想像力を拡張するための具体的な行動をするべきだと思う」
「ついでに言うとね、『どこが性的なのか分からないから教えて』という要求自体が、相手に性的な言動を指し向ける暴力ですからね。そういう人は、少しは自分の暴力性を自覚した方がいいですよ」と主張した。
本件を一般の人々は主にどう捉えているのか。Xにおける投稿データの分析から見ると、東洋水産の動画は2月6日の投稿から15日までは批判的なリプライが見られなかった一方、中村氏が批判的なリプライを寄せた16日から急増したことが分かった。多くの人がそれぞれに独立して問題意識を持ったというよりも、一部の人が声を挙げたことがきっかけで問題意識が伝播した、エコーチェンバー的な動きと見ることもできるだろう。