2025年3月16日(日)

トランプ2.0

2025年2月12日

 トランプ米大統領の“独断専行”政治が世界を揺るがし始める中、自らのロール・モデルとされる19世紀末のウイリアム・マッキンリー第25代大統領との類似性に米マスコミの関心が集まっている。

鉄鋼・アルミに25%の追加関税をかける大統領令に署名したトランプ大統領(ロイター/アフロ)

唯一無二の「模範的存在」マッキインリーとは

 「国民の皆さん。米国の黄金時代がいま始まる」――。去る1月20日、トランプ大統領就任演説はこの一言から始まった。

 続けて「今日を境に、我々の国は繫栄し、世界中から再び尊敬されるようになる。すべての国の羨望の的なる」云々と意気込みを吐露した。

 改めてこの演説全文を読み返すと、「再び信頼、富を取り戻す」「再び製造業の国となる」「再び豊かな国なる」……などのように「再び」という表現が繰り返し使われていることに気づかされる。

 これは明らかに、評論誌「The Nation」が指摘している通り、ウイリアム・マッキンリー大統領(1897-1901)当時の「Gilded Age」(金メッキ時代)の繁栄ぶりを念頭に置いたものである。トランプ氏は同大統領を唯一無二の「模範的存在」と位置付けてきた。

 大統領は就任演説の中で「マッキンリー大統領は、『関税と才能』によってわが国を非常に豊かにした」と礼賛したのみならず、実際に執務開始のその日に、敬意を表し合衆国最高峰の山として知られる「デナリ山」を「マッキンリー山」に急遽改名させる大統領令に署名しており、第25代大統領当時への思い入れは際立っている。

 では具体的に、かつての「Gilded Age」とはどのようなものだったのか。その概要と特徴について多くの米国史資料は以下のように説明している:

 「南北戦争(1861~1866)終結後のアメリカにおいては、政治的な統一がもたらされ、とくに共和党主導による南部再建、海外領土拡張が進むにつれて国家として飛躍的な発展を遂げた。経済面においては、巨大産業資本が台頭し、1880年代にはイギリスを抜いて世界最大の経済国になった。農村主体の農本主義から都市を基盤とした工業資本主義への転換が加速した」

 「『Gilded Age=金メッキ時代』は、とくに1870年から1900年までの30年間にわたる繁栄期を指しており、この呼び名は、当時のうわべだけの不安定な経済成長時代を題材にした著名作家マーク・トウェインの小説の題名に由来している。トウエインはこの中で、南部再建、西部開拓ブームに便乗した悪徳業者が市街地を闊歩し、政財界を巻き込んだ大規模な贈収賄、官僚の職権乱用、利権争奪など、捜査当局の摘発や連邦議会調査でも手のつけようないほどの当時の腐敗ぶりと金権政治の実態を鋭いタッチで描き、大きな反響を呼んだ」


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