石破茂首相とトランプ大統領による日米首脳会談を日本側の与野党、メディアはこぞって評価している。支持率低迷をかこつ首相にとっては援軍だろうが、所期の目的である「信頼関係」の構築は、ホンモノになったのか。そもそも、なぜ日本の官民は、安倍―トランプ関係を持ち出してまで、個人的な関係に固執するのか。

もうひとつの焦点、日本製鉄によるUSスチール買収問題にしても、「合意」で決着したのか。詳細が明らかになっていないうえ、両社があくまで既定路線にこだわったなら、問題はいよいよこじれるだろう。現時点で、首脳会談の成否を断じるのは早計だ。
野党側もこぞって賛辞
会談結果に与党が手放しの賛辞を贈るのは当然としても、石破非難を強める立憲民主党も、「USスチールの問題で理解を得ることができた」、「日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用されることも確認できた」(野田佳彦代表)と述べて歓迎した。
日本維新の会の前原誠司共同代表、国民民主党の古川元久代表代行もそれぞれ、同盟の抑止力・対処力が謳われたことに高い点を与えた。
石破首相は昨年来、多くの時間を費やして周到に事前の準備を整えた。大統領と会った経験のある麻生太郎自民党副総裁、安倍晋三元首相との会談に同席した岸田文雄前首相、最近2度会談したソフトバンクの孫正義会長兼社長らから、「結論から先に」などのアドバイスを受け、膨大な項目の「応答要領」を記憶したという。
首相は訪米前、「持ちあげて、持ちあげて気持ち良くさせる。私らしくないかもしれないが、やるしかない」(読売新聞2月9日朝刊)ともらしていたという。
7日のホワイトハウスの会談でも、トランプ氏が昨年7月、演説中に狙撃されたことに触れ、大統領がひるむことなかったことを、「歴史に残る場面だった」とややオーバーに賞賛してみせた。
そうしたことが結実してか、先方は「強い男。偉大な首相になるだろう。安倍氏も高く評価していた」と、両氏のライバル関係を知ってか知らずか、故首相を引き合いに答礼を返した。会談後の共同記者会見でも、懸念された関税引き上げや日本への防衛費増額要求などは封印された。